終活、遺言、相続・・・これらの単語を新聞やニュースで見聞きしない日はないくらいです。それもそのはず、先日総務省が発表した人口統計では90歳以上の人口が初の200万人超になったとのこと。50~60代なんて、まだまだ若者のような時代になってきました。
その50~60代の方々からよく聞くのが、相続が「争族」になった話です。仲の良い兄弟姉妹、何の問題もなく乗り切れるだろうと思っていた相続が、泥沼化、絶縁状態になってしまう例も後を絶たないとか。お金持ちなのに、より金の亡者になるケースも、無いお金をめぐって取り分の争いになるケースもあり、どんな経済状況の人にもあり得るというのが、人間のお金への執着のあさましさなのでしょうか・・・。
誰にとっても他人事ではないようです。

FPが行うライフプランニング、マネープランニングは「人生で(生きている間に)お金に困らないようにする」ことを目的とします。人生の終わり直後に起こる相続対策もFPの大切な仕事ですが、相続財産の多い方の遺言や節税対策、事業承継対策等が多くなります。
前述のような話を聞くにつれ、たとえ財産が多くなくても、もめそうな事柄が見当たらない家族であっても、被相続人たる人、誰もが「立つ鳥後を濁さず」を意識して、考えておくことが、受け継ぐ立場の相続人が冷静、円満でいるためには必要なことと強く思うようになりました。家族の形態も複雑化し、シングルも、拡大家族(再婚によるステップファミリー)も多いですから、被相続人の責任は重大となってきます。

いきなり遺言書を書くといってもハードルが高く、気後れすることも多いはず。まずは自身の財産、持ち物の整理を少しずつ始めることが必要です。どこに何があるのか、権利関係はどうなっているのか、利用している金融機関、加入保険・会員権等の確認、重要書類、印鑑、WEB関連のID、パスワード・・・等々。整理する過程で不要なもの、長く利用していないもの等処分できるものも見つかり、着手もできます。
そうした一覧を作った後に、ようやく財産の分配を考えることができます。終活や遺言というと、高齢になってから初めて考えるべきもののように思えますが、上記のような作業はなかなか手間がかかることは間違いありません。人間は誰もが必ず亡くなりますが、それがいつかは分かりませんし、頭も身体も元気なうちに行う方が心身ともに楽なはず。元気だからこそ、未来に来る終末を客観的に見て行えます。作った一覧は毎年の金融財産のリバランスと同様に定期的な見直しは行うこと。財産の分配も必要に応じて見直せます。

高齢者のみならず、誰もが自身の人生が終わった後に周囲が困ったり、もめないようにしておくことは必要ですよね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員