暗号資産における「ステーキング(staking)」とは、stakeする、つまりお金を賭けることを意味する。この場合、ブロックチェーンネットワークに賭け金を預け入れることを意味する。たとえば、カジノではお金を賭けることによってポーカーなどのゲームに参加できるように、暗号資産でもステーキングすることによって何かの権利を得ることができる。当然、賭けたお金が没収されることもあり、そのことを「スラッシング」という。

このようにお金を賭けることでブロックチェーン上の取引検証者になることができる仕組みを「プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)」という。この仕組みを採用する暗号資産の代表格イーサリアムでは取引検証の報酬として年利約4%(執筆時点)もの利益が受動的に得られる。比較的リスクの小さい投資手法であることから、今ではそのステーキングの参加者は個人・企業を含め54万ノード以上、資産額は約1700万ETH(約3兆5千億円)まで増大している。

イーサリアムは2022年にPoSへの移行を果たしたばかりだが、アップグレードの道半ばで、これまではネットワークに賭けられているお金を引き出すことができなかった。そのためステーキングの規模はおのずと拡大し続けてきた。しかし、今月に予定されている追加のアップグレードによって取引検証者が自由に資産を引き出すことが可能になるため、それによるマーケットへの影響が懸念されている。

直近、米国の証券取引委員会(SEC)は暗号資産取引所クラーケンのステーキングサービスが無登録証券にあたるとして訴追した。これを受けて同コインベースも同様の指摘を受けるのではないかとの不安もある。両者を合わせるとイーサリアムのステーキングにおけるシェアは約18%に及ぶ。今後の規制方針次第ではサービス利用者が資産を引き上げる可能性はあるだろう。

一方で、今では米国以外でもイーサリアムのステーキングサービスを提供する業者は増えており、リドをはじめ分散型金融(DeFi)で同様のサービスも利用できるため、規制による影響はシェアが変動する程度であろうとの見方もある。また、2022年以降のイーサリアム価格の暴落を受けて含み損を抱えているステーキング参加者も多いことから売り圧は限定的との意見もある。

いずれにしても今回のアップグレードによってイーサリアムのステーキング環境に大きな変化が及ぶことは予想される。その前には期待先行による買いが強まるかもしれないが、イベント当日にかけては突発的な売りに警戒したいところである。