ただ長生きするのではなく、健康で長寿であることは、確かに理想とする老後の姿ですよね。私がへそ曲がりなのか、ふとFPとしての立場がムクムクと湧きおこりました。「長生きのリスク」です。長生きすれば、それも健康であれば、それで完璧!とはならないのが現実ではないでしょうか。
先週、両親と旅行をしました。二人とも高齢ですが、いわゆる「元気な老人」です。よく歩き、よく食べることを満喫できるということは理想の高齢者なのですが、それでも薬を常用していますし、どこが痛い、ここが辛いといったところは当然あります。つまり世間一般に健康長寿といっても、若い頃に比べれば病院に通う機会も増えますし、体力・判断力等は衰えますから事故等に遭遇するリスクは高まります。また現在元気であっても、何かしらの大病を乗り越えている方も多いです。一度の手術・入院で終了というわけでなく、ずっと通院している場合も多いでしょう。寝たきりや介護状況にならなくとも、そうしたお金は必要です。若い時の想定以上に思いがけない医療費等が嵩んでくることもあるわけです。
また、元気で時間と好奇心があれば、交際費、遊興費等、長い老後に大きくかかります。住居費も、持ち家であればリフォーム・修繕費、賃貸であれば家賃その他がかかり続けます。
一般にライフプランを立てるとき、わかりやすく平均寿命を基準とし、食事量も活動量も現役時代ほどはかからないという想定で生活費も少なめに見積もるのが一般的ですが、自身の老親と過ごした印象やテレビ番組で取材されている高齢者を見ると、健康な老後であれば私たちが想像する以上に活発ですし、健康でなければ医療費等は大きく増えますし、いずれにせよ想像以上にお金は必要なのかもしれません。
長寿を素直に喜び、楽しむためには健康だけではなく、人生の終盤にお金に困らないでいることはとても大切です。現在の生活でも手一杯の現役世代に老後資金を割り増ししましょう、というのは簡単に実践できるわけではないでしょう。
それでも前回も書きました「普通の家庭」が普通に困らないようにするためには、将来を意識した準備は必要です。子どもの教育費、遊興費、住宅ローン、保険など見直すことで、わずかな差でも長期間で見れば大きな差になることはあります。
色々な意味で世界中が不安定な今、「まさか」のリスクは種類も増えてきているのかもしれません。お金に困らない健康長寿を目指して、備えを万全にしたいものですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員