先日、興味深い方法により不動産処分を試みている人が英国にいるという話を友人から聞きました。

欧米においては古く歴史ある建物は非常に価値があるとみなされます。(英国においては何百年前の幽霊が出る、ということが価値になることも!)価値を高めるためには、しっかりとメンテナンスをし、美しくリノベーションをすることも必要不可欠です。
ある家族が英国郊外にジョージアン様式の邸宅を手に入れ、大金をかけて美しくリノベーションをしたものの、個人的事情により売却しなければならなくなりました。彼らは当初不動産屋さんを通した通常のルートで売却しようとしたものの、査定価格も折り合わず、買い手もつかなかったとのこと。
そこで自分たちの手で売却をすることを考えたということです。
ただ、その方法が興味深く、ネット社会の現在だからこそ成り立つといえます。自分たちで決めた(リノベーション分のコストを含めて回収できるだけの)金額をネット上に提示して売るというのではなく、抽選で当たった人がその不動産を入手できるという富くじ方法です。

1口2ポンド(=300円弱)のチケットを、期限を決めて多くの人に購入してもらいます。目標販売チケット数(50万チケット)があり、それは家の購入費用、リノベーション費用、法的および、その他の諸手数料をカバーするものとしています。売主はインターネット・マーケティングビジネスを手掛けていたことがあり、リスクや可能性について熟考したうえで決めたとのこと。
お金ではなく不動産が当たる宝くじ、それを個人が運営しているという形ですね。
運が良い人はわずか2ポンドで豪華な邸宅を手に入れられる!というもの。英国では様々なメディアがこのくじ方式の不動産処分をニュースとして取り上げているようです。チケットが目標数に達しなかった場合や、税金その他の詳細な記載は残念ながら見つけられませんでした。ネットで拡散しているため、国外からチケットを購入する場合も、もちろんあるでしょうし(私の友人は買ったそうです)、もし当選した場合の法的税的な取扱いがどうなるのか等も含め、個人的には懐疑的にならざるを得ない部分もあります。もちろん、この手法が日本で法律的に行えるかは不明です。現実に当選者が存在するのかを確認する手立てもなく、もし日本で同様の手法をネット上などで見かけた場合、それが不動産絡みの詐欺である可能性も考えられます。

それにしても世界はネットで簡単につながり、こうした取引は簡単に国境を越えます。もし、それが詐欺などではない真っ当な取引であっても、法律や税金のことを知らないと、後で想定外のトラブルに陥ることもありえます。十分に気を付けるようにしましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員