モトリーフール米国本社、2022年12月25日 投稿記事より
主なポイント
・アップルとエヌビディアの株価はどちらも過去1年間に大幅に下落
・アップルは中国でサプライチェーン問題に直面
・エヌビディアはコロナ後のPC市場の低迷が課題に
弱気相場で投資するなら、どちらの銘柄か
アップルとエヌビディアはどちらも人気のハイテク銘柄でしたが、この1年間はかつての輝きを失っています。アップルの株価は、2022年1月に過去最高値の180.96ドルを付けましたが、その後に130ドル台まで下落しています。エヌビディアの株価も、2021年11月に付けた過去最高値の333.41ドルに対して、現在は160ドル台で取引されています。
両社の株価が下落した背景には、インフレや金利上昇といったマクロ的な逆風により、投資家が保守的な投資に走ったことがあります。どちらの企業も、それぞれの課題に取り組んでいます。アップルはiPhone売上の減速とサプライチェーンの混乱に直面し、エヌビディアはコロナ後のPC市場の落ち込みに苦戦を強いられています。
これらの不人気ハイテク株のうち、2023年以降にどちらかが反発することはあるでしょうか。両社をめぐる追い風、逆風、バリュエーションから検証してみましょう。
アップルのケース
アップルは、2021年度(2021年9月期)にスマートフォンのiPhone12シリーズでようやく5G市場に参入した結果、売上高と1株当たり利益(EPS)は前年比で、それぞれ33%と71%増加しました。5G対応機種が一巡し、新たなサプライチェーン問題が浮上した2022年度についても、売上高は8%増、EPSは9%増となりました。
2022年度の通期売上高では、iPhone部門は前年比7%増、ウィンドウズPC市場が低迷する中でMac部門は14%増、ウェアラブル・ホーム・アクセサリー部門はアップルウォッチやエアポッズ、その他周辺製品の販売増により7%増でした。サービス部門の売上高も、エコシステム全体で9億人を超える有料会員により14%増となりました。これらすべての成長エンジンが、iPad部門の8%減収を相殺しました。
しかし、2023年度については、アップルは苦戦が予想されています。主力の生産委託企業である台湾のフォックスコンは、2022年11月に同社最大のiPhone工場で従業員がコロナ規制と未払いボーナスに抗議して、混乱に陥りました。アップルはこうした課題を考慮して、iPhone14 ProとPro Maxの年間生産目標を9,000万台から8,700万台に下方修正していますが、混乱が続けば、アップルにとって予想外の逆風が生じる可能性があります。
とはいえ、アップルは2022年度末時点で1,690億ドルの現金と有価証券を保有しており、過去10年間に5億5,000万ドル相当の自社株買いを実施しています。金利の上昇がキャッシュフローの弱い不採算企業を圧迫し続ける一方で、アップルはその強力な流動性により、魅力的な投資先であり続けるはずです。また、同社は2023年に、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を組み合わせたような新しい「複合現実(MR)」のヘッドセッドを発売する見通しであり、この製品は、新たなハードウェア収入源になるとみられます。
これらの予想に基づき、アナリストは2023年度の売上高を3%増、利益を2%増と予想しています。安定的に成長していますが、予想株価収益率(PER)は22倍と、株価は決して割安ではありません。
エヌビディアのケース
調査会社JPRによると、エヌビディアは2022年第3四半期に、ディスクリートGPU市場で88%のシェアを占めました。残りの12%は、アドバンスト・マイクロ・デバイシズとインテルで分け合っています。
エヌビディアの2021年度(2021年1月期)の売上高と調整後EPSはそれぞれ、前年比53%増と73%増でした。2022年度もさらに成長し、売上高は61%増、調整後EPSは78%増となりました。
こうした成長の大部分は、3つの追い風によってもたらされました。
1.新型コロナウイルスのパンデミック期間中に、リモートワーク、オンライン授業、PCゲームの普及に伴って、PC売り上げが好調だったこと
2.ゲーミングGPUによる暗号通貨マイニングへの関心の高まり
3.機械学習や人工知能(AI)による複雑なタスクを処理するために、データセンターでより強力なGPUが使用されるようになったこと
ところが、アナリストはエヌビディアの2023年度業績について、売上高は横ばい、EPSは27%減を予想しています。失速の原因は、コロナ後のPC市場の減速、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンとゲーム規制による中国での販売不振、暗号通貨市場の落ち込みにあり、これらがデータセンター向けGPUの販売好調を打ち消しているのです。米国政府による中国への最先端チップの輸出禁止措置も、エヌビディアの最上位データセンター向け半導体チップに影響を及ぼしており、業績のさらなる重石になるとみられます。
2024年度はこれらの市場が徐々に安定すると予想されることから、アナリストは売上高とEPSについて、それぞれ9%増と32%増と予想しています。しかし、予想PERは38倍であり、短期的な成長見通しに対して、依然として割高感があります。
それでも、アップルと同様に、エヌビディアも潤沢な現金を保有しています。2022年8-10月期末時点の現金及び現金同等物は28億ドルであり、2023年度は第3四半期までの累計で88億ドル相当の自社株買いを実施しています。この豊富な流動性により、同社は新しいチップの開発、新たな市場への進出、中小企業の買収を行う余地が十分にあります。実際に、2022年初めに独占禁止規制当局によって計画は潰されてしまいましたが、ソフトバンクグループ傘下のアーム・ホールディングスを400億ドルで買収する計画がありました。
明らかな勝者はアップル
アップルは、短期的に業績が低迷していますが、事業は多様性に富み、エヌビディアに比べて景気の影響を受けにくくなっています。保有現金ははるかに多く、株価は相対的に割安で、製品やサービスのポートフォリオ拡大に関しても、エヌビディアより明らかに多くの選択肢を持っています。したがって、ハイテク株にとって厳しい足元の環境下において、エヌビディアよりアップルの方が、投資妙味があると思われます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Leo Sunは、アップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアドバンスト・マイクロ・デバイシズ、アップル、インテル、エヌビディア、ソフトバンクグループの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。インテルの2023年1月満期の57.50ドルコールのロング、インテルの2025年1月満期の45ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、インテルの2025年1月満期の45ドルプットのショート、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。