2022年、中国株が大幅下落から上昇へ向かった2つの要因

2022年も残すところ、あと1ヶ月となりました。2022年は中国当局のIT大手企業や不動産企業などへの規制、米中間の争い、ゼロコロナ政策による悪影響、世界的な株安などから2021年に続き、中国株は大きく下落した1年となりました。

2021年12月31日終値から2022年12月5日終値までの騰落率は上海総合指数が-11.8%、香港ハンセン指数が-16.6%となっています。

ただし、両指数とも10月末あたりを底として株価は急速に戻しているところで、上海総合指数は200日移動平均線を上抜けたところ、香港ハンセン指数はもう少しで200日移動平均線に届きそうなところまで戻してきています。世界的にも株価が10月末頃から上昇していることもありますが、最近の中国株が大きく上昇している背景には2つの理由があります。

不動産企業への規制緩和

1つ目の理由は中国当局が不動産企業のエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)規制を緩和したことがあります。中国証券監督管理委員会は不動産市場を支えるために、上場不動産企業が株式発行、M&A、組織再編、私募による借り換えなどを実施することを認めると述べています。

そもそも、中国の不動産市況が悪化した理由は中国当局が不動産企業の資金調達に規制をかけ、資金繰りの苦しくなった不動産企業が倒産したり、未完工物件が増えたりしたことが原因です。そのため、今回の発表は政策の転換を示唆するものであり、ここまで大きく下げていた不動産株は急速に株価を回復しています。

ゼロコロナ政策に対する緩和措置

2つ目の理由は新型コロナウイルス関連規制への抗議活動によって、中国当局がゼロコロナ政策を緩和する姿勢を見せていることです。

中国の孫春蘭副首相は「オミクロン株の病原性は比較的弱く、ワクチン接種も進み、新型コロナウイルスに対する政府の知見も蓄積されている。このため、新型コロナウイルスとの我々の闘いは新たな段階にあり、新たな課題に向き合っている」と述べ、ゼロコロナという言葉を使わずに新たな課題に向き合っていることを示しました。

また、北京市が新型コロナウイルス感染者の一部について、自宅隔離を容認するなど、具体的なゼロコロナ政策の緩和措置もとられています。ゼロコロナ政策が緩和されれば、ロックダウン(都市封鎖)や厳しい行動制限による中国経済停滞のリスクが大きく後退します。

2023年の展望、中国株は反発の年となることを期待

景気回復の鍵を握る、中国当局の政策緩和策

中国株にとって2022年は激動の1年だったと言えるでしょう。では、2023年の中国株はどうかと言えば、もちろん3期目に入った習近平政権が経済や金融市場に配慮した柔軟な政策を出してくるかどうか次第とも言えます。

とはいえ、ここに来て中国当局がゼロコロナ政策緩和に向けての姿勢を見せていることや、不動産市況を改善させるための政策を打ち出しているところを見ると、2023年も景気や金融市場に一定の配慮をした政策を打ち出してくる可能性が高いのではないかと思います。

そして、中国は米国のようにコロナ対策で大規模な金融緩和や財政投資拡大を行ってこなかっただけに経済は停滞気味ながら、その分インフレ率は抑えられており、緩やかではあるものの金融緩和や財政投資が行える状態です。

この状況でゼロコロナ政策が緩和され、ロックダウンや厳しい行動制限などが実施されなければ、2023年の景気は緩やかに回復し、実質GDP成長率は4.5%~5.0%程度へと回復する可能性が十分にあると思います。

大手企業は積極的な自社株買い、中国経済回復で株価上昇の可能性

その一方、例えば大手IT企業の業績を見てみると、中国経済の減速を受け入れる形で新規の投資を控え、コストを削減して利益を出せるような体制になりつつあり、大きく下落した株価を利用して積極的に自社株買いを行っているところです。ここで中国経済が回復してくるとなると株価は大きく上昇する可能性があるのではないかと思います。

中国株は2022年だけではなく、2021年から大きく下がってきており、香港ハンセン指数も足元は反発してきたとは言え、2020年3月のコロナショック時の最安値よりもまだ下に位置しており、大きな割安感があるためです。このように考えていくと、2023年は中国株にとって2021年と2022年の大幅下落から反発に向かう1年になるのではないかと期待したいところです。

ともあれ、2022年もまもなく終わります。中国株にとって、2022年は2021年に続き、激動の1年でしたが、反発を期待出来る芽が最後になって出てきた状況であるとも考えられます。