株価が小幅調整となった2つの要因とは

2022年11月下旬の中国本土市場・香港市場は小幅調整となっています。2022年11月14日終値から11月28日終値までの騰落率は、上海総合指数が-0.2%、香港ハンセン指数は-1.8%となっています。

株価が小幅調整に転じた理由としては、11月上旬の大幅上昇からのテクニカル的な反落の側面があります。そして、もう1つの理由はゼロコロナ政策についてです。

ゼロコロナ政策は、11月11日に中国への入国者に義務付けている隔離期間を10日間から8日間に短縮するなどの緩やかな緩和策が発表され、これを好感して株価は上昇していました。とはいえ、中国当局は緩やかな緩和はしたものの基本的にゼロコロナ政策は堅持していました。

しかし、そのような中で中国では新規感染者数が急拡大し、11月27日の中国本土の新規感染者数は4万347人と4万人を超えてきており、一部では新たな封鎖措置や行動制限が行われるまでになっています。また、新規のロックダウン(都市封鎖)を恐れて上海や北京でゼロコロナ政策の撤回を求める大規模な抗議活動も発生しています。

不動産市況など、中国政府の政策には期待も

その一方で中国政府の政策期待も根強く残っています。中国人民銀行(中央銀行)は11月25日に12月5日から預金準備率を0.25%引き下げることを発表しました。これは2022年4月以来、2度目の措置となります。

また、中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会は不動産デベロッパーへの金融支援に関する政策を発表しました。これを受けて中国の銀行は不動産デベロッパーに対して、大規模な与信枠を設定し、資金供給をする姿勢を明確にしています。

もともと、中国の不動産不況は中国当局が三条紅線という不動産企業への融資規制措置を発表したことから、不動産デベロッパーの資金繰りが苦しくなり、破綻する企業や未完工物件が増えたことなどによって、消費者の不動産市場に対する信頼度が低下したことから始まっています。

中国国家統計局による2022年10月の不動産販売額は前年同期比28.2%減となっており、中国の不動産市況は非常に厳しい状態が続いていました。それだけに今回のデベロッパーへの融資を拡大する方向転換は中国の不動産市況を転換する可能性のある、大きな第一歩とみることもできると思います。

大手IT企業は堅調。今後の鍵はゼロコロナ政策の早期転換があるか

中国では2022年7-9月期の決算が発表されています。時価総額大手企業のテンセント(00700)やアリババ・グループ・ホールディング(09988)の決算内容を見てみると、罰金、寄付金など非現金や一時的費用を差し戻して計算する調整後営業利益(本業の儲けを表す)は、ようやく上向きになってきたところです。

もちろん、まだ手放しで喜べる内容ではなく、中国の景気減速と競争によって減速が続いていることには変わりないのですが、先行投資よりも費用を抑えて損益の改善を優先させることによって利益は上向いてきています。

また、これらのIT大手企業に財務内容の問題はなく、強固なバランスシートに減速したとは言え、新たな利益が資本として積み上がり続けています。そして、割安になった株価を背景に大規模な自社株買いを続けています。これは多くのIT大手企業に共通してみられる傾向であり、株式市場の状況が変われば、株価は大きく上昇する可能性があります。

今後の鍵は、やはりゼロコロナ政策の転換が早期にあるかどうかでしょう。中国の新規感染者数の拡大は続いており、気温が低い時期でもあることから、しばらくはこのまま感染者数の拡大が続くものと思われます。

そうなると、中国当局はこれまで通り封鎖措置や行動制限を強化するか、あるいは感染者数の大幅な拡大を容認するか、どちらかを選択しなくてはなりません。

もちろん、習近平政権が過去の政策を安易に失敗だったと認めるとは考えにくいところではありますが、前述したように大規模な抗議活動にも繋がっています。本格的な政権批判へと繋げないようにするためにも、ゼロコロナ政策の緩和を早めて実施する可能性も十分にあると思われます。