昨年の流行語大賞にもノミネートされた「下流老人」。不安を募らせるネーミングではありますが、実は多くの人がなりうるリスクを抱えています。
昨年も何度か老後の不安については書いています。

第393回 「老後破産」
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2015/02/16.html

第403回 「老後と経済合理性」
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2015/04/27.html

第406回 「老後の備え?」
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2015/05/25.html

あらためて書き出してみるとなんと3回も!それだけ皆さんに気を付けていただきたいテーマだということですね。

少子高齢化がどんどん進み、すでに60代は「まだまだ若い」世代と言われています。実際その世代の方々は気力体力ともにお元気な方が多いのも事実ですが、第二の人生がそれだけ長いということ。
現在の40・50代がその年代に達したときは、同等以上に元気なことでしょう。ところがこの世代は将来、ますます公的年金はあてにできなくなります。既に自覚のある人が大半なようで「公的年金だけでは生活できない」と思う人が40代では男性で61%、女性で73.5%もいるようです。(第一生命経済研究所「40・50代の不安と備えに関する調査」(2013年)より)
現在の60代以上の世代との違いは、その働き方やライフスタイルによるところもあるかもしれません。年功序列制度から実績主義に変わり、会社の倒産や合併、早期退職募集など、それ以前に比べ雇用状況が変わりやすくなってきたため、年収が思うように伸びないケースも増えました。同時に正社員・正職員ではなく、非正規で働く人もこの世代には多くなっています。貯蓄額が極端に少ない人も多いのです。
また「おひとりさま」と呼ばれるシングルがぐんと増えているのもこの世代以降でしょう。適齢期(現在では死語??)で結婚して、子どもを育て・・・というライフスタイル以外の選択肢が多くなっているとも言えます。
これらの状況から「モデルケース」が想定しにくくなり、「定年までに○○円貯えましょう」といったものを見聞きしても、自分に当てはまるとは思えず、一体どれだけの備えがあれば老後は大丈夫なのだろうか・・・という不安を煽る結果となります。

これだけライフスタイルや家族構成が多種多様になってくると、やはり自分自身で老後の設計図を描いていくしかなくなります。60代以降も働き続けるつもりであっても、現役時代よりは収入が減るでしょう。どの程度の「収入」(年金を含めて)が見込めるのか、どこでどんな生活をするのか、絶対必要な生活必需資金、譲れない趣味やお金をかけたい点、親の介護資金はどうするのか等「支出」部分とそれらの差を補填する「貯え」部分を書き出して確認しておくことが大切です。
不足が明確になれば、その時点で対策を考えればよいのです。

普通の生活をしていた人のみならず、現役時代は高収入で消費も華やかだった人でも「下流老人」に陥る可能性があります。不安に思うだけではなく、冷静に自身の生活を見直しておくことが必要ですね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員