日銀が決定したマイナス金利は、現在では欧州でECB(欧州中央銀行)、スイス、デンマーク、スウェーデンが導入しており、世界初ではありません。実は日本でも市場取引の中では金利がマイナスになったことはありますが、日銀が政策として取り入れたのは初めての試みです。1999年に「ゼロ金利」を導入した際に「もうこれ以上金利は下げられない」からと2001年に量的緩和を導入したという経緯があります。それほど政策的に金利をマイナスにするという事態は異例です。
金融政策は伝統的には「金利政策」「公開市場操作(市場で流通している国債等を売買してマネーの流通量を操作)」「預金準備率操作(金融機関の日銀に預ける準備預金の利率を操作)」の3つが主となりますが、金利政策についてはほぼゼロ金利が継続していて、昨今では政策として登場することはありませんでした。それに代わってマネーの流通量に注目した量的緩和政策がとられるようになり、2013年に異次元緩和と呼ばれる「量的・質的緩和」が登場したのです。
マイナス金利とはその名の通り、お金を預けると本来は利息分が増えていくはずのところ、お金(元本)が減っていき、お金を借りるとお金が貰えるという事態になることです。
今回、日銀がマイナスにした金利は日銀に金融機関が保有している当座預金のうち一定の水準を超過した金額についてのみが対象です。具体的には、日銀にある金融機関の当座預金は以下の3つの階層に分けて運用されることになりました。
- 1.基礎残高(2015 年1月~12 月積み期間(基準期間)における平均残高までの部分)...これまで通り0.1%
- 2.マクロ加算残高(所要準備額に相当する残高ほか)...ゼロ金利
- 3.政策金利残高(1,2を上回る部分)...ここにマイナス0.1%を適用
以上のように金融機関の過剰預金部分に対してのみの政策で、世の中に出回るお金を増やすことが目的であり、即金融機関が対個人に対し、預金金利をマイナスにするということは想定しにくいことがわかります。少なくとも、普通預金をしているとどんどん預金額が減っていくとか、住宅ローンを借りれば借りるほど借金の元本が減っていくというわけではありません。ただでさえ低い金利をより下げるという可能性はありますが、住宅ローンの金利が引き下げられる効果は期待できるかもしれませんね。
それ以上に、円安・株高への誘導により投資家心理が前向きに変わる転換点となり、持続することを期待したいものです。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員