習近平政権への疑念が株価下落の要因に

2022年10月下旬の中国本土市場・香港市場は大幅下落となっています。2022年10月17日終値から10月31日終値までの騰落率は、上海総合指数が-6.2%、香港ハンセン指数は-11.6%となっています。

株価が下がっている理由は大きくわけて2つあります。まず1つ目は、10月22日に閉幕した共産党大会で最高指導部が習近平氏に近い人物で固められ、市場を重視する改革開放派がいない状況になったことです。

統制強化路線を継続して経済や民間企業の成長を抑制するとの懸念が強まっています。特に習近平政権が掲げる共同富裕思想から、これまで大きく締め付けられていたハイテク株や不動産株が大きく下落しています。

なお、株価の急落を受けて、中国人民銀行(中央銀行)と国家外為管理局が株式・債券市場の健全な発展を維持すると表明した他、証券監督管理委員会(証監会)は別の声明で、「規制下で透明性を保ち、開放され、力強さと強靱さ」を備えた資本市場の構築を加速する方針を示しました。

この発言を受け、10月26日と27日にハイテク株は買い戻されたのですが、28日には、すぐに再度売り込まれてしまっています。投資家の習近平政権への疑念はかなりのものとなっており、特に外国人が売買自由な香港市場から外国人投資家の資金の引き上げる動きが加速している印象です。

むろん、株価が大きく下がったところは、優良株の買いチャンスであるという見方は変わりません。しかし、現在株価は一段と大きく下がってきたものの、まだまだ底がどこになるのか見えず、不透明感が強い状況です。

この先、底を付けたと言えるようになる1つの条件は、習近平政権が市場に配慮した政策を採っていくというサインを出すことです。今の海外投資家の習近平政権に対する反応は行き過ぎです。今のところ、まだ投資家の間では疑念と不透明感が強く残っている状況であるので、大きな政治的好転を待ちたいところです。

再び新型コロナウイルスの感染拡大、市場心理の圧迫へ

もう1つの理由は共産党大会でゼロコロナ政策の緩和が期待されていた一方で、緩和に関する話が一切出てきていないことです。そして、中国では新型コロナウイルス感染が再拡大しており、湖北省武漢市や中国東部沿岸の工業地帯などで新たなロックダウン(都市封鎖)措置が講じられていることが市場心理を圧迫しています。

現在、ゼロコロナ政策で行動制限を受けている中国人は2億3,200万人前後となっており、主要都市のビジネスや遠隔地の食料供給に混乱が生じている様子で、共産党大会後にむしろロックダウンは強化されている印象です。ちなみに、今回、共産党大会で決まった最高指導部の序列2位は上海のロックダウンを行った李強氏です。

なお、10月下旬に発表された中国の経済指標はまちまちでした。まず、発表が延期されていていた第3四半期のGDP成長率が10月24日にようやく発表され、こちらは3.9%増と、第2四半期の0.4%増から大きく回復し、市場予想の3.3%増を上回りました。

そして9月の鉱工業生産も前年同月比6.3%増と市場予想の4.8%増、8月の4.2%増を上回っています。その一方で、9月の小売売上高は前年同月比2.5%増と市場予想の3.0%増や8月実績の5.4%増を下回るものとなってしまいました。

また、10月の中国国家製造業PMIが49.2(市場予想49.8、前月実績50.1)、中国国家非製造業PMIが48.7(市場予想50.1、前月実績50.6)と予想よりも悪く、景況感の境目である50も下回るものとなっています。

このように中国経済は第2四半期から回復しているものの、本調子とは言えず、そのような中でゼロコロナ政策によるロックダウンなどが再び大規模に発生すれば、中国経済はまた落ち込んでしまうことになります。いずれにせよ、前述の通り、今は大きな政治的好転を待ちたいところです。