モトリーフール米国本社、 – 2022年10月30日 投稿記事より

主なポイント

・スポティファイ・テクノロジーは10月25日に第3四半期決算を発表
・ユーザー数および有料会員数は力強く増加
・しかし、粗利益率は拡大していない

経営陣が楽観視する粗利益率の動向について、投資家は注視すべき

秋の決算シーズンが始まり、10月末には多くのハイテク企業や消費者向けインターネット企業が第3四半期決算を発表します。音楽配信サービス大手のスポティファイ・テクノロジーも、10月25日に第3四半期決算を発表しましたが、その内容にウォール街は失望し、株価は翌10月26日に10%超下落しました。

同社は粗利益率が拡大せず、またもや利益を生み出すことができませんでした。投資家として、スポティファイ・テクノロジーの見通しを懸念すべきでしょうか。

第3四半期決算、ユーザー数は堅調に増加

スポティファイ・テクノロジーの第3四半期決算の問題点を指摘する前に、まずは好材料に着目してみましょう。同社のプラットフォームへの人気は高まる一方で、第3四半期の月間アクティブユーザー数(MAU)は、前年同期比20%増の4億5,600万人に達しました。前期比では2,300万人の増加であり、過去最高の純増数です。増加の大半は「その他の地域」、すなわち米州および欧州以外の世界各地からのものです。「その他の地域」のユーザー数は、今ではMAU全体の26%を占め、この割合は2018年の11%と比べると、大幅に上昇しています。

このペースでMAUが増加し続ければ、スポティファイ・テクノロジーが掲げる、2030年にユーザー数10億人という目標は問題なく達成できそうです。これまでの傾向として、新規MAUのおよそ40%は、広告が流れないプレミアム会員になります。第3四半期のプレミアム会員数は、前年同期比13%増の1億9,500万人でした。スポティファイ・テクノロジーの売上高のうち、プレミアム会員のサブスクリプション売上が大半を占め、第3四半期には26億5,000万ユーロを生み出しました。MAUが増加し続ける限り、サブスクリプション売上も成長し続けるはずです。

長期的には、スポティファイ・テクノロジーは、ポッドキャスト広告やオーディオブックの販売といった、他のさまざまな方法で売上を得ることを考えていますが、これらの投資はまだ初期段階であり、現時点ではビジネスとして形になっていません。

利益率が株価の重石に

投資家は、スポティファイ・テクノロジーの粗利益率が拡大しないことに不満を募らせています。第3四半期の全社の粗利益率は24.7%であり、2018年当時とほとんど変わっていません。プレミアム会員の粗利益率は、楽曲やアーティストのプロモーションツールにより過去数年間でわずかに上昇しており、第3四半期は28%でした。

一方で、広告の粗利益率は急速に低下しており、第3四半期はわずか1.8%でした。売上高全体に占める割合は小さいですが、広告粗利益率はここ数年、全社粗利益率の足を引っ張っています。

広告粗利益率がこれほど低いのはなぜでしょうか。それは、スポティファイ・テクノロジーがポッドキャストのコンテンツ、広告、ライセンス戦略を構築するために積極的に投資を行っていることが原因です。例えば、同社はザ・リンガーといったメディア企業を買収したり、ジョー・ローガン・エクスペリエンスといった人気番組とライセンス契約を結んだりしています。こうした先行投資により、スポティファイ・テクノロジーはポッドキャスト聴取における市場シェアを大きく獲得しており、多くの市場でNo.1プレーヤーとなっていますが、短期的に粗利益率は押し下げられています。

企業側は、粗利益率がいずれ30~40%に達し、それにより純利益率が10%になると明言していますが、そのためには、ポッドキャストの固定費以上に広告売上を伸ばし、プロモーション・マーケットプレイスを急速に成長させる必要があります。これらのセグメント(広告およびプロモーションツール)はどちらも粗利益率が高いため、スポティファイ・テクノロジーの事業に占める割合が大きくなれば、粗利益率の拡大に大きく寄与するはずです。

今後の見通し

今後数年間のスポティファイ・テクノロジーをめぐっては、2つのシナリオが考えられます。楽観的シナリオでは、粗利益率がようやく拡大し始め(経営陣は2023年に実現すると見ています)、今後10年間は好調が続きます。足元の時価総額は160億ドル、売上高は120億ドル前後であり、今後数年間で純利益率が10%に達すると考えると、株価収益率(PER)約10倍は割安と言えます。

一方で、悲観的シナリオでは、プロモーション・マーケットプレイスやポッドキャスト広告があまり成長しないために、全体の粗利益率が拡大せず、純利益率も伸びません。これは、株価にとって悪いニュースです。

本記事のタイトルに戻ると、答えはイエスです。投資家にとって、スポティファイ・テクノロジーが損失を出し続け、利益率が拡大しないことは懸念すべき要素です。今後数年間でこの状況が改善されなければ(経営陣は自信を持っているようですが)、スポティファイ・テクノロジー株は投資する価値がないかもしれません。元記事の筆者Brett Schaferは、スポティファイ・テクノロジーの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はスポティファイ・テクノロジーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。