ゴールデン・ウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。
お休みでゆったりした頭にピリッとするお話を一つ・・・。

最近、テレビで投資詐欺について取り上げていました。
この誠に不快で憎むべき犯罪は、肉体的に被害は受けなくても、精神的、将来の生活設計に大きくダメージを与えるものです。オレオレ詐欺の対策は進んできているようですが、なお大規模に劇場型とも言われる手の込んだ詐欺も増えてきているよう。そんなことを考える頭と時間があるのなら、しっかりと働き、投資をすべきですよね!

さて、実はそうした劇場型詐欺の「走り」のような投資詐欺を身近に見たことがあります。それはFPとして初めてお客様の資産を見せていただいた時です。

「円建てで高利率、しかも全くの無リスクの債券。限られた、選ばれた方、優良な方に紹介いただいた方のみが購入できる商品。」
そのお客様はごく一般の方で、けっして無知無教養な方ではありません。その方がとても信頼していた人から紹介され、事務所に行ったところ、一等地に立派なオフィスがあり、きちんとした印象の担当者に上記のような説明をされたということでした。
日本では学校でお金や投資についての教育を敬遠してきたこともあり、その方(当時で50代半ば)の年齢ではよほど興味のある人しかお金や投資については詳しくないというのが現実でした。

日本の金利が1%なくても、表面的にはそれ以上の金利を受け取れるように見える債券はあります。ただ、そうした債券にはカントリーリスクや信用リスク、為替リスクや株式変動リスクなどのリスクが裏側についていることによって成り立つ「仕組み」もので、当然のことながら、売られるときには詳細のリスク説明があるものです。
「高利率ですが無リスクです」なんていうことは、実際の市場金利のレベルから考えれば存在しえないのです。
どんな高貴な人にも、どんなに資産をもっているプロの投資家にも、市場は公平です。美味しい話なんて投資の世界にはありません。リスク・リターンは常に呼応しているのです。

件のお客様の資産については、即刻弁護士を立てて交渉し、無事に全額取り返すことはできました。そのお客様に紹介した知人の方も被害者でした。

たとえ、どんなに信頼した人の紹介であっても、金融機関を名乗る人からのススメであっても、最後に自分の資産を守れるのは自分自身しかいません。
投資のテクニックや難しい理論を覚えるのは後回しにしても、基本的な市場の成り立ちと仕組みだけは知っておくこと、上手い話には裏があること、迷ったら正しい知識を持っている人に相談すること、を心がけるようにしましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員