新年度が始まり、私たちの身の回りでも様々な変更が実施されました。

私たちの消費生活に直接に関係するものでは身近な食料品の値上げがあります。4月から牛乳、ヨーグルト、バター、チーズなどの乳製品、トマトケチャップ、食用油にウィスキーなどが値上げ(5~20%程度)されました。これら食料品の値上げは今月に始まったわけではなく、円安や原材料費の高騰により今年に入ってから冷凍食品、アイス、パスタ等も含め、じわじわと値上げされています。厳しいですが、インフレを実感する点ですね。

生活に打撃を与える話だけではなく、シニア世代にはプラスの変化もあります。国民年金や厚生年金の支給額の増額です。国民年金は毎月約600円の増額で6万5008円に(満額の場合)、厚生年金 は夫婦二人の標準世帯(二人分の基礎年金を含む)で2400円程度の増額で22万1507円になります。

自身の受給額と違う!と思われる方も多いと思いますので、ここで簡単に老齢年金の支払額の決まり方を説明しましょう。
公的年金額は加入年数や厚生年金加入者の場合は現役時代の報酬によって決まります。基礎年金(いわゆる国民年金にあたる)と報酬比例部分(厚生年金)の合計です。その上で、日本では年金額の実質価値を維持するための物価スライド制が導入されており、加入年数等から算出された年金額に物価スライド率を掛け合わせることで支給金額を決定します。その物価スライド率は物価・賃金の変動率に応じて年度毎に改定されるのですが、現役世代の人口減少等による負担軽減も加味されます。
今年、年金額が増額になると発表された際の物価スライド率は「+0.9%」です。実はインフレ率のみであれば2%以上の増加のところ、前述の「調整」によって決められたものです。つまり、実際の世の中のインフレ、値上げに対しては支給額の実質価値は引き下げられたことになります。

「増額」という耳に嬉しい響きで書きましたが、食料品の値上げ等から年金受取金額の増額を実感でない方も多いと思います。さもありなんということですね。生活スタイルにもよりますが、額面の増額をそのまま喜べるかというと難しいでしょう。

ちなみに現役世代にとっては食料品の値上げのほか、国民年金保険料も値上げ、軽自動車税も増税(新車登録車のみ)と、負担増が目立つ状況です。
現役世代は大手企業を中心に給料アップが報道されていますし、株価上昇、ドル高円安による「ニューリッチ層」の台頭も注目されています。とはいえ、誰もが潤っているわけではないというのが現実で、身近な商品の値上げの連続で、心理的に財布の紐が固くなってしまうという方も多いのではないでしょうか。

どの世代にとっても、現時点ではマネー管理次第で乗り切れる範囲のインフレとも言えますので、まずは自身のお金の把握を確実に行うようにしていきましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員