ここ最近のマーケットの一番の話題はやはり株価の動きでしょうか。
たとえ株式投資を行っていない人にとっても、久々の高値水準は注目に値しますし、他の市場の動きにも大いに影響を与えるものです。
テレビのニュース等では、大手企業のベアアップや中国人の「爆買い」による小売の繁盛等、景気の良い話も多くなり、株価が上がるのも、さもありなんと受け止められるかもしれません。市場は「気」によって動くとはいえ、そのまま上値に向かって突き進むというイメージを持ちやすくなってきます。
けっして悲観的に市場を見ることを勧めるわけではありませんが、なぜ今株価が高値をつけているのか、その事情と背中合わせにあるリスクについて、理解しておくことは大切ですね。
まず、誰が日本株を買っているのか、です。
先日発表になった現物および先物株式売買の3月第1週は、「外国人」(海外投資家)の1076億円の買い越しで、買い越しは4週連続とのこと。
それに対し、個人投資家は1102億円の売り越し。信託銀行は226億円の買い越しということです。
もう一つ、相場を動かす大きな要因が「公的マネー」の動きです。その正体は私たちの年金資金。もっとも注目されるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は株式運用の比率を全体の25%に倍増させると言われています。そのほかにも共済年金やかんぽ生命、ゆうちょ銀行の資金等、合計すると10兆円を越すとみられており、その巨額資金から市場では「クジラ」と呼ばれています。
それに日銀による投資信託を通した買い支え(緩和策)もあります。
これらの動きの期待感が支えとなり、また欧州の緩和マネーの日本株への資金流入も見込まれての日本株上昇ということです。
上述の通り、今の株価上昇はもちろん企業業績への期待もあるものの、大きな資金流入とその期待というところが大きいですよね。また、米国株の動きが日本株の動きにも大きく関わっていますので、米国の金融引き締めへの転換はタイミング次第で日本株の大きな変動をもたらします。一般的にいえば金融引き締めによって投資マネーの米国への回帰、株式市場からの一時的な流出も考えられます。
バブルとは言いませんが、期待を確信と信じて進んでしまうことは危険です。上昇気流はうまく乗りこなすことこそが醍醐味です。
ここで改めて注目は上記、個人投資家による売り越しです。
上昇したところで、こまめに利益確定をしているとすれば、その動きはなかなかのものですね。過去においては、個人投資家は相場の後追いをして、巨額資金の利益確定の売りによる急落で泣きを見ることが多かったものです。経験のみならず、ネットの普及とツールの使い方の浸透、リスクヘッジの意識の高まりなどからか個人投資家は洗練してきたようですね。
ふたを開ければ、最後に儲かったのは個人投資家!ということにもなるかもしれません。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員