週末のテレビで、「老後破産」が特集されていました。昨年からメディアでもよく取り上げられていますから、ご存じの方も多いと思います。言葉の衝撃度もありますが、その実態はもっと恐ろしいものです。
老後になってから破産する。わずかな年金収入のみで、その時点から職を探すことは難しく、収入が増えることは期待できず、蓄えが底をつき、つい借金してしまったら・・・。どうにも本人の努力では救い難い状況になってしまいます。そして怖いところは、そうした状況に陥ってしまった人々の多くはギャンブルだとか、詐欺にあっただとか、といった事情で破産したわけではないのです。
退職金もあるし、年金もあるから、ささやかな生活には困らない...と思っていた人が、知らず知らずのうちに破産への道を歩んでしまうことは珍しいことではありません。数千万円の預貯金を蓄えて退職したサラリーマンが70代に入ってから破たん状況に陥ってしまったケースもあるようです。
こうなってくると他人事ではなく「明日は我が身」という気持ちになってきますよね。
一般的なサラリーマンであれば、数千万円という単位をまとめて手にすることはあまりないことでしょう。それだけに退職金などで相応の当てがあれば、気が大きくなるかもしれませんが、それは大変危険な落とし穴です。
●退職金で一括返済するつもりで住宅ローンを組もう。

●退職後は海外旅行などを存分に楽しもう。

●退職金で家の修繕や家電の買い替えをしよう。

などなど、退職金を見込んで楽しい計画等を立てている方も多いかもしれません。これはボーナスを当て込んで「ボーナス払い」でつい買い物をしてしまうのに似ているのですが、違うのはその後リカバリーする可能性がかなり低くなってしまう点です。
まず、いずれも数10~数100万円単位のお金が一度に出費されます。その後の年金生活の中でその出費分を取り返す、新たに積み上げることは大変難しくなりますから、そのまま老後資金の大幅な減少となってしまいます。
もちろん、退職金以外に十分な預貯金等の蓄えがあるのであれば、そこまで神経質にならなくてもよいはずです。とはいえ普通のサラリーマンの老後破産の例では、数千万円の蓄えが身内の病気、介護、子どものトラブル(子どもの会社の破たん等)といった突発事情で10年と経たないうちに底をつきたということです。
現役世代であれば、以下を心掛けておきたいですね。

1.退職金を当てにし過ぎない。

2.必要と言われる金額よりも、多くの「万が一資金」を考える。
(ただし必要額には個人差があるので、「一般的な意見」をうのみにしないように!)

3.病気、介護に備えて保険の加入を検討する。

4.年金収入のみの生活は想像以上に厳しいことを覚悟する。
倹約づくしの老後生活を覚悟せよ、と言っているわけではもちろんありません。楽しく、生き生きとした生活を送るためにも、心して早くから準備が必要だということをあらためて自覚するようにしておきましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員