先週、同世代間格差について書いたばかりですが、『21世紀の資本』で話題のトマ・ピケティ氏が来日しました。同氏は「市場だけに任せていれば経済格差は拡大する」と論じていますが、社会貢献のある格差は認められるべき、民主主義、資本主義の重要性も主張しています。「民主主義は闘争である」とも。
資産を持つ者はより潤うというのは、アベノミクスの進行過程で高額商品を買い求める人が出てきた一方で、より苦しい、大変と言っている人もいることから日本でも顕著に表れています。
先進国で格差が大きいのは米国です。社長(CEO)が何十億という報酬を受け取り、所得上位1%が全米の総所得の25%を得て、上位1%の資産は全米の33.8%を占めているというデータもあります。ウォール街を占拠した「私たちは99%である」というデモは記憶に新しいですね。ちなみに日本では上位1%の所得が国民所得全体の約9%とのこと。
日本の経済格差も拡がりつつありますが、前回も書いた通り、政策等による格差是正を待っていても残念ながらすぐには変わりません。いきなり所得上位1%を目指すなんて、宝くじでも当らない限り難しいですよね。もし「持たざる者」の道を進んでいってしまうと、「持つ者」との差は拡がるばかりです。
ところで、米国では上位1%の富裕層が全米の50%の株式と債権資産を持っているとのこと。つまり保有資産が富を生み、その富=所得がまた資産を増やしているのです。「貧困ループ」に対する「富裕ループ」ですね。
もし所得=給料等がそれほど多くなくとも、資産を増やしていけさえすれば富裕層までいかずとも、「持つ者」の仲間入りはできるかもしれません。
「普通の人」(すでに米国では普通(中流)がなくなりつつあり極端な二極化になってきているとのこと)がいかにして資産を増やせるのか・・・というと、こつこつ地道な努力しかありません。といっても世界中が低金利の現在、わずかなお金を預貯金にしていても増えるという実感はなかなか持てないもの。私たちは資本主義、市場経済の真ん中にいるのですから、努力すべきは「投資」ではないでしょうか。
参加者誰に対しても共通、公平にチャンスがあるのが市場です。
正確に言えば、プロには情報網、分析力、資金力等々、個人には太刀打ちできない条件があり、同じ土俵とは言い切れませんが、それでも個人投資家にもそれ相応のチャンスとリターンはあるのです。(場合によってはプロが巨額の損をした裏で個人が大儲けということも!) リスクさえコントロールして、無理をしないで長く市場と付き合えれば、普通の個人も富=資産を作り出すことはできます。
2週続けて格差の話になりました。冒頭の「民主主義は闘争」ではありませんが、工夫と努力で状況を変えるチャンスは今の日本にはまだある、と思います。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員