上海総合指数は、政策期待は高まるものの外部要因が足かせに
2022年9月上旬の中国本土市場・香港市場は下落となっています。2022年8月29日終値から9月5日終値までの騰落率は、上海総合指数が-1.3%、香港ハンセン指数は-4.0%となり、特に香港ハンセン指数が大きく下げています。
上海総合指数は引き続き50日移動平均線に頭を押さえつけられる形で調整し、支持線となっていた100日移動平均線を下廻ってきました。
最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)引き下げや8月31日の国務院常務会議で経済安定に向けた追加措置の詳細を全て打ち出すように指示されたこと、また李克強首相が経済安定へ政策総動員を約束したこと(2022年の経済政策は2020年に比べ「より強力」と指摘)から政策期待は高まっているのですが、四川省の成都市が新型コロナウイルス感染抑制のためロックダウン(都市封鎖)導入を発表したことなどから売りが優勢となっています。さらには干ばつによる電力不足の影響なども引き続き株価の重しとなっています。
バークシャー・ハサウェイがBYD株を売却
個別では世界的な著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いる米国の投資会社バークシャー・ハサウェイが中国電気自動車メーカーの比亜迪(BYD)(01211)を約133万株売却し下がっている事も市場心理の重しとなっています。
バークシャー・ハサウェイは2008年に2億2,500万株分のBYDに投資し、その後、BYDは大きく上昇してきており、多額の利益を得ていたところでした。今回が初の売却となった他、さらに9月2日には172万株を追加で売却したことも発表しています。
これを受けて、中国本土市場でもBYD(002594) が大きく下がった他、自動車株も全般的に軟調になっています。本土株のBYDの値動きを見ると、ここまで比較的堅調に推移してきましたが、株価は200日移動平均線を下に一気に突き抜け、軟調な株価展開となっています。
なお、BYDの業績見通し自体は悪くなく、アナリスト予想を見ると今期も来期も大幅増収増益見通しとなっており、バークシャー・ハサウェイ-の売りは飽くまでも利食い売りだったとの認識が出来ると思います。
香港ハンセン指数は大きく下落
一方で香港ハンセン指数ですが、8月31日までは比較的堅調な動きだったのですが、9月に入って軟調な動きとなっています。
株価は引き続き下向きの50日移動平均線、100日移動平均線、200日移動平均線の下にあり、強い下落トレンドが続いているところです。8月26日に米中の金融当局が米国の株式市場に上場する中国企業の会計監査問題(上場廃止問題)について、ひとまず合意したことを発表していたことからテンセント(00700)などの一部ハイテク株は比較的堅調でした。
もっとも米国株が金融引き締め懸念から下がる中で香港ハンセン指数自体もその影響を受けています。また、中国で新型コロナウイルス対策のロックダウン(封鎖措置)が新たに実施されたことも株価の重しとなっています。
なお、当該期間に発表された中国の経済指標を見て見ると、8月の中国国家製造業PMIが49.4と市場予想の49.2や前月実績の49.0を上回りました(但し景況感の境目である50は下回っています)。また、中国国家非製造業PMIも52.6と市場予想の52.3を上回りました(前月実績は53.8)。
その一方、8月のCaixin中国製造業PMIは49.5と市場予想の50.0や前月実績の50.4を下回り、景況感の境目でもある50も下回りました。また、Caixin中国サービス業PMIは55.0と市場予想の54.0を上回りました(前月実績は55.5)。直近の中国の経済指標を見ていると、やはり中国経済は弱い動きになっているところです。その上に、干ばつによる電力不足の問題やゼロコロナ政策によるロックダウン、米中の対立などが発生している状況です。
これに対抗するため、冒頭にあるように中国当局は金融緩和や財政政策の拡大をしているわけですが、大盤振る舞いというほどではなく、今後は着実な回復といった形になるのではないかと思われます。中国本土株は政策期待が株価を支える一方、干ばつやゼロコロナ政策によるロックダウン、米国の金融引き締めへの懸念や欧州のエネルギー危機などが株価の重しとなる見込みです。