香港ハンセン指数は、下落続くも大手ハイテク株が上昇

2022年8月下旬の中国本土市場・香港市場は小幅下落となっています。2022年8月15日終値から29日終値までの騰落率は、上海総合指数が-1.1%となり、香港ハンセン指数は-0.1%となっています。

上海総合指数は50日移動平均線に頭を押さえつけられる形で調整し、100日移動平均線が支持線となっている形です。8月22日には最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)が1年物で3.65%と0.05%、5年以上物だと4.30%で0.15%引き下げられました。これで年初来では1年物が合計1.5%、5年物が合計3.5%引き下げられたことになります。

現在、米国はインフレを抑制するために積極的な利上げを行っているところですが、中国はインフレ率がそこまで高くないために、経済を支援する利下げを積極的に行っているところです。

さらに中国当局は景気刺激策として19項目の政策パッケージを準備したと報じられており、政策期待が高まっているところです。ただ、先週は干ばつや熱波による電力不足懸念、新型コロナウィルスの感染拡大が相場を圧迫しました。

その一方、香港ハンセン指数は8月24日までは下落基調が続いていたものの、25日に大きく上昇しました。

この日は前場の取引が台風警報のため中止となり、半日取引だったのですが、前述の通り中国政府が一段の景気刺激策を打ち出したことが上げ材料となりました。そのことに加え、米国の株式市場に上場する中国企業の会計監査問題(上場廃止問題)をめぐって、米中双方が合意に近づいたとの報道が伝わったことからテクノロジー銘柄が大きく上昇し、大手ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比6.0%高となりました。

個別でもJDドットコム(09618)が11.0%、アリババ・グループ・ホールディング(09988)が8.8%、美団(03690)が8.0%、テンセント(00700)が4.8%の上昇となっています。

米国に上場する中国企業の上場廃止問題では、米中双方が歩み寄りへ

さらにその後、8月26日には米中の金融当局が米国の株式市場に上場する中国企業の会計監査問題(上場廃止問題)について、ひとまず合意したことを発表しています。

この“ひとまず”という言葉の意味ですが、元々この問題は中国当局が情報流出を懸念して米国からの監査を拒否していたのですが、ここに来て監査を受け入れることで合意に至ったということです。

ただ、実際に中国側が本当に米国の求める監査を受け入れるかはまだわからず、最終的には12月に米国側がしっかりと中国が協定を守っているかどうかを判断して最終合意となる見込みです。したがって、もしも今後、中国側が米国の求める監査を受け入れない場合は、再び波乱が起こる可能性が残されたままであると言えます。

しかしながら、このニュースのインパクトは強く、米中重複上場銘柄の大手ハイテク株は強い動きになっています。

ジャクソンホールでの米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長講演の影響で8月26日に米国株は急落しましたが、その余波を受けた8月29日の香港市場ではアリババ・グループ・ホールディングが前日比-0.7%、テンセント-0.4%、美団が+2.6%となるなど、それほど大きな影響は受けていない印象です。

もちろん、この後、金融引き締め懸念で米国株が大きく下がっていけば香港株も全体的に大きな影響を受けると思いますが、上場廃止問題で合意があったことは中国の大手ハイテク株にとっては大きな一歩となります。

今回の合意は中国政府側としても大手ハイテク企業を支持しているという表明にもつながり、これにより大手ハイテク企業への規制強化懸念も後退するでしょう。実際、前述の19項目の政策パッケージの中でもプラットフォーム経済の発展を支持するとの記載もあり、大手ハイテク企業の成長が中国の成長にとっても重要であることが確認された印象です。