直近のJ-REIT価格動向

J-REIT価格は、7月中旬以降、順調な推移を示している。東証REIT指数は7月25日に終値で2,000ポイント台を回復し、8月19日には2022年度としては高値となる2,038ポイントまで上昇した。その後は反落しているが、8月24日まで2,000ポイント台での推移となっている。

8月19日以降のJ-REIT価格下落の要因は、米10年債利回りの上昇と考えられる。米連邦準備制度理事会(FRB)は6月に続き7月にも0.75%の利上げを行ったが、米10年債利回りは7月中旬から低下を続け8月2日には2.6%を割り込む水準となった。

この利回り水準は、FRBの大幅利上げ前の5月頃と同水準であり投資家は景気の先行きに対する懸念を高めていることを示していた。

しかし8月19日以降、米10年債利回りは上昇基調が続いており、8月23日には7月上旬以来となる3%を超える水準となった。米10年債利回りが低下していたことがJ-REIT価格の上昇要因となっていたため、利益確定の動きなどにより調整していると考えられる。

インフラファンドTOB成立が示す今後の課題

さて今回は前回のコラムで予告した通り、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人(以下RJIF)のスポンサーによるTOB成立で見えた今後の課題について記載していく。なお本件については、5月下旬から3回にわたり記載しているため、経緯などの詳細についてはそちらをご覧頂きたい。

RJIFはスポンサーであるリニューアブル・ジャパン(9522)(以下RJ社)によるTOBが成立し8月22日に上場廃止となった。

RJIFの価格は、2017年3月の上場からTOB価格の115,000円を下回って推移していた期間が大半であった。したがって投資家においてはキャピタルロスが発生しないTOBとなったという面では妥当なTOB価格とも言えるだろう。

ただし、RJ社側のTOBには、投資家にとってTOB価格を上回る資本価値があることを示すものがあったと私は考えている。具体的には、TOB提案において太陽光発電所の価格が上昇しているため、RJ社が開発した太陽光発電所をRJIFが取得できない状況になっているという点だ。

RJ社はRJIFが上場後に取得した金額と同程度で実質的に太陽光発電所を「買い戻し」ている。つまりRJ社側の提案内容とTOB価格が釣り合っていないと考えられるのだ。

したがって、仮に一部の投資家がRJ社側のTOBに対しRJIFの解散を要求し、全保有発電所を売却するという提案があった場合、投資家の残余財産の分配額がTOB価格を上回る可能性が高かったのではないかと考えられる。

TOBの提案では、別の要因として出力制御の対象となる太陽光発電所が増加することでRJIFの今後の収益性が低下する可能性が記載されており、その点への投資家の懸念がTOB賛同(※)に繋がったとも考えられる。しかし資産価値という面では、投資家から見ればTOB価格が低いという判断も可能だった。

したがって今後の課題としては、別のインフラファンドに対しTOBがあった場合には、将来的かつ不確実な収益低下リスクと現状の太陽光発電所価格の高騰を考慮して判断することも必要ではないか、と考えられる。

※ TOBの公表以降、RJIFの投資口売買高は大幅に増加しており、TOB前からの投資家の多くは賛同ではなく売却というかたちで意思表示と行った可能性が高い。

 

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