バークシャー、4-6月期にアップル株とエネルギー株を買い増し
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が8月15日、SEC(米証券取引委員会)に2022年6月末時点のフォーム13Fを提出した。以下は前回5月16日に発表された2022年3月末時点のものと保有株式を比較したリストである。
今回、新規ポジションの追加はなく、ベライゾン・コミュニケーション(VZ)とロイヤリティ・ファーマ(RPRX)の株式を手放したことが特徴だ。その他、ゼネラルモーターズ(GM)、ユー・エス・バンコープ(USB)、さらにはクローガー(KR)の持ち高を減らした。
一方、アップル(AAPL)への投資については、新たに390万株を追加購入し、6月末時点で1220億ドル相当の株式を保有していることがわかった。アップル(AAPL)はバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の株式ポートフォリオの約40%を占めている。
また、この期間にオクシデンタル・ペトロリアム(OXY)を2200万株、シェブロン(CVX)を230万株購入し、エネルギー株への投資を加速させている。さらに、自動車・住宅金融サービスなどを手掛けるアライ・フィナンシャル(ALLY)の保有株式を3倍に増やした。
バークシャーの6月末時点の保有株のトップ5は、アップル(AAPL)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、コカ・コーラ(KO)シェブロン(CVX)、アメリカン・エキスプレス(AXP)で、この5銘柄でバークシャーのポートフォリオの約7割を占めている。
バークシャーの2022年第2四半期の最終赤字は過去2番目の大きさ
バークシャーが8月6日に発表した2022年4-6月期の最終損益は437億5500万ドルの赤字だった。四半期の赤字額としては、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年1-3月期(497億ドルの最終赤字を)に次ぐ、過去2番目の大きさだった。
米国の会計基準では保有する上場株の評価損益を最終利益に反映させる必要があるため、上場株を多く保有するバークシャーの最終損益は相場の動向に左右される傾向が高い。FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めに向かう中、株式市場が荒れ模様となった影響で、4-6月期には保有するアップル(AAPL)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)、アメリカン・エキスプレス(AXP)等の上場株に530億ドルの評価損が発生したことが響いた。
バークシャーの上場株への投資事業が注目されることが多いが、彼らはエネルギーや鉄道会社、保険会社等、多くの事業会社を傘下に持つコングロマリット企業である。グループ全体の業績動向を反映する営業利益については、前年同期比39%増の92億8300万ドルと大幅増益となった。北米の鉄道事業や保険事業が堅調だった。
バークシャーは、2022年に入り投資姿勢を攻めに転換している。8月6日付の日本経済新聞の記事「バフェット氏の米バークシャー、最終赤字5兆円 4~6月」によると、1月からの3ヶ月間には511億ドル、4月からの3ヶ月間は61億ドル分の新規投資を実施したとされており、上場株の買い入れペースは減速したものの、年初からの購入総額は依然として売却額を上回っている。このため、これまで高水準に積み上がってきた手元キャッシュは減少に転じている。
バークシャー、オクシデンタル株を追加取得、保有比率は20%超え
バークシャーは7月以降もオクシデンタルの株式を追加取得しており、直近の保有比率は20%を超えた。同社がSECに提出した最新の資料によると、8月4-8日にかけてオクシデンタルの株式670万株を追加で取得し、保有株数は1億8800万株に高まった。
保有比率は発行済み株式数の20.2%に達し、持ち分法適用会社の対象となる20%を超えたため、2022年第3四半期以降は、オクシデンタルの利益の一部を連結業績に取り込めることになる。
オクシデンタルの2021年度の業績は前期から大幅に改善している。2月24日に開催された取締役会においては、30億ドルの自社株買いプログラムも発表された。原油価格の上昇に伴い、今期はさらに業績が拡大することが見込まれる。
オクシデンタルは米国の大手石油会社の1つで、米国において多くの資産を保有している。2019年のアナダルコ買収によって一時、業績は落ち込むところもあったが、一連の投資を通じてバフェット氏は米国における優れた資産を手に入れたことになる。
バークシャーは、アナダルコ買収の資金調達取引の一部となった100億ドル相当のオクシデンタルの優先株も保有している。また、現在の価格で50億ドル相当の普通株式8390万株を購入する権利も保有している。これらの権利が行使されれば、バークシャーの持ち株は26.8%に達し、現在の株価で約160億ドルを保有することになる。
バフェット氏は、オクシデンタルの信用状況が改善されれば、同社を買収すると見られている。再生可能エネルギーが将来的に普及する一方で、最近のサプライチェーンの混乱やガス価格の高騰は、より環境に優しい送電網への移行が進む中で化石燃料がいかに重要であるかを投資家に思い知らせるものとなっている。
バークシャーによる上場企業への投資ばかりが注目されるが、実はバークシャーは傘下にパシフィックコープやミッド・アメリカン・エナジー等の電力会社、石油や天然ガスのパイプライン、再生可能エネルギーの会社を数社所有しており、石油・エネルギー事業は、同社の事業全体の中で重要な位置を占めている。既存事業との相乗効果も期待できるであろう。
バフェット氏が継続して石油株へのエクスポージャーを増やしているのは、本格的なインフレ時代が到来していることの表れなのかもしれない。
バフェット氏は、「インフレは債券投資家をも欺く。マットレスの下に現金を置いている人も騙される。ほとんど全ての人を騙すのだ」と述べているが、「インフレに対する最良の防御策は自分自身のスキルに投資すること」だと強調している。つまり、稼げということだ。