上海総合指数、米中間の緊張激化で一時下落するも回復
2022年8月上旬の中国本土市場・香港市場は軟調な推移となっています。2022年8月1日から15日終値までの騰落率は、上海総合指数が+0.5%となり、香港ハンセン指数は-0.6%となっています。
上海総合指数は200日移動平均線で頭を押さえつけられる形で株価が下がったあと、100日移動平均線を割り込みましたが、その後、上向きの50日移動平均線のところまで戻しています。
8月2日、3日と大きく下落しましたが、これはペロシ米下院議長による台湾訪問計画を巡る米中間の緊張が高まる中、中国が台湾周辺の南シナ海などで複数の軍事演習を開始するなど、地政学リスクが高まったのが原因です。ただ、その後は世界的な株価上昇ム-ドもあって、株価は戻してきているところです。
中国人民銀行は8月15日に中期貸出制度(MLF)の金利を2022年1月以来7ヶ月ぶりに2.85%から2.75%に引き下げました。8月20日に公表される予定の最優遇貸出金利(LPR、ロ-ンプライムレ-ト)も引き下げへの期待感が高まっているところで、これは中国本土株にとってプラスとなるでしょう。
中国経済指標は弱い内容
利下げは中国経済の底入れのために行われるわけですが、実際のところ、中国の経済指標はあまり良くありません。7月の中国の経済指標ですが、Caixin中国サ-ビス業PMIは55.5と市場予想の53.9や前月実績の54.5を上回り、景況感の境目でもある50を上回っていますし、輸出も前年比18.0%増と市場予想の14.1%増や前月実績の17.9%増を上回っています。しかし、輸入は2.3%増と市場予想の4.0%増を下回っています(前月実績は1.0%増)。
また、7月の新規人民元建て融資は6790億元と、市場予想の1兆1250億元や前月実績の2兆8063億元を大きく下回りました。そして、7月の小売売上高は前年比2.7%増(市場予想前年比4.9%増、前月実績3.1%増)、鉱工業生産は前年比3.8%増(市場予想前年比4.3%増、前月実績3.9%増)、固定資産投資は前年比5.7%増、(市場予想前年比6.2%増、前月実績6.1%増)とそれぞれ市場予想を下回っています。
中国本土株は今後、利下げ期待や政策期待が株価の支援材料となりそうです。なお、中国南部のリゾ-ト地である海南島の三亜市で新型コロナウイルス感染拡大を抑えるため、ロックダウン(都市封鎖)が新たに導入されましたが、相場への影響は限定的でした。
中国本土市場と比較すると軟調な香港市場
一方で、香港ハンセン指数はやや軟調な推移となっています。香港ハンセン指数も8月2日に下落しましたが、その後、中国本土株のような戻りがなく、軟調な株価推移が続いています。
香港は時価総額の大きな大手IT企業の株価が軟調で、相場の足を引っ張っています。その大手IT企業の一角であるアリババ・グループ・ホールディング(09988、以下アリババ)は4-6月期の決算を発表しました。売上はほぼ横ばい、利益や利益率は前年同期を大きく下回りましたが、市場予想は超えました。しかし、決算発表後の株価は軟調に推移しています。
これは市場予想を上回ったものの、中国のマクロ景気の減速の影響を受けて、回復にはもう少し時間が必要であるとみられている点と、IT企業への引き締めがまだ続くものとみられている点が原因かと思います。
他方、アリババは7月26日、香港市場へのプライマリ-上場への切り替えを申請すると発表しています(上場基準の厳しいプライマリ-上場となることで、同社株が香港と本土との相互取引対象銘柄になる可能性が高くなります。同社は中国本土投資家にとって最も良く知られた企業の1つであり、資金流入が大きくなると期待されます)。また、同社は自社株買いを加速しており、さらに関連会社のアント・グル-プのIPO再開に向けた動きも一部で報じられています。
香港市場へのプライマリ-上場やアント・グル-プのIPO再開は2022年に実現する見込みは薄く、早くても2023年以降になると思います。そうした中で2023年には業績の回復も予想されますので、現在のような株価低迷期は長期的にはチャンスと捉えることができると思われます。
これはアリババに限ったことではなく、テンセント(00700)や美団(03690)など、他の大手IT企業についても同じことが言えると思います。テンセント(00700)も積極的に自社株買いを行っています。
中国のウォ-レン・バフェットとも言われる段永平氏が37.37ドルでテンセントの米国預託証券(ADR)10万株を取得したとの報道も出ています。目先、香港株は軟調な株価推移が続きそうですが、長期目線では優良株の買いの好機であるという見方はそのままで良いと思われます。