昨年から市況の変化に応じてキャッシュポジションを資産の5割にまで増やした米国株ブロガーのもみあげさん。8月から再びキャッシュを投資に回す予定だと話します。もみあげさんに今、注目しているセクターや銘柄、今後の投資戦略などをうかがいました。
●もみあげさんプロフィール●
日系サプライチェーン企業に勤務する兼業投資家。米国駐在員となり、2018年から米国株投資を始める。毎日Twitterとブログ「もみあげの米国株投資-お金で幸せになる!-」で米国株関連の最新情報を発信。米国在住経験を生かし、一次情報をメインにバイアスのない情報を中立に届けることを重視している。 Twitterフォロワーは3年間で16万人。 無類のサッカー好きでもある。
――どのようなきっかけで投資に興味を持ったのですか?
正直な話、日本にいた頃は預貯金が限りなくゼロに近かったです。その後、仕事で米国に赴任し、ドル建ての資産が増えてきました。知人に米国での資産運用について尋ねたら、「米国では定期預金に預けたら金利が3%くらい付くよ」と言われて驚きました。日本の銀行ですと0.1%未満の金利しか付かないので…。その後「早速、米国で定期預金を始めないと」と思いました。その知人に「それ以外に投資とか考えている?」と聞かれ、米国では皆が当たり前のように投資をしていることを知りました。そのことをきっかけに、自分と同じ日本人駐在員で米国株投資をされている方のブログ等を読みながら、S&P500や、ETF(上場投資信託)を学び、一つひとつ勉強しました。
――もみあげさんの現在のポートフォリオをお伺いできますか?
S&P500などの指数に連動するインデックス型のETFが10%、債券が20%、成長株が20%、残りの50%は現金で保有している状態です。
――現金の割合が多めですね。
時点では、そうですね。ただ、8月には現金を投資に回していこうと考えています。米国市場の株価はFRB(米連邦準備理事会)の利上げをほぼ織り込んでいる印象です。今後、米国経済のリセッション(景気後退)があるのかないのか、様々な見方がありますが、見通しが定かでないことで悩んでいても仕方がないと思っています。
ただ、当面は今の相場状況が続くと思うので、トレーリングストップ注文(価格を自動追従する逆指値)を使って、5%か10%の下落で損切りすることを想定しています。
波乱含みのバイデン政権下で注目のセクターとは
――8月に新規投資を予定されているとのことですが、今後ポートフォリオに追加したいと考えている銘柄を教えていただけますか?
私が今注目しているのが不動産セクターです。新築(新設住宅着工戸数)はローン金利の上昇により減っていますが、中古住宅の販売件数は伸びています。不動産市場が落ち込むとリセッションが現実味を帯びてしまうので、政策的にも守られている部分があるのではないかと思います。
その中で魅力的だと考えるのがビルダーズ・ファーストソース(BLDR)という企業です。この企業は、建築資材の提供をメインに、ビルのメンテナンスなどのサービスも行っています。この分野ではホームデポ(HD)が有名ですが、ホームデポが主として住宅を対象にしているのに対し、ビルダーズ・ファーストソースはスーパー向けなどが伸びていて、こちらの方が期待を持てるように思います。
もう1つ注目しているのが、旅行プラットフォームのトリップ・ドットコム・グループ(TCOM)。ホテルや航空券の予約、パッケージツアーなどを扱っています。本社が上海にあるため地政学リスクがやや気になりますが、チャートを見ると下値が堅く、キャッシュフローも潤沢。これから旅行業界が盛り上がってくる中で、成長への期待感があります。
――ご著書『もみあげ流 米国株投資講座』(ソーテック社)の中で、米国市場のセクターについて、ご自身が投資を通じて得た印象を一覧表にまとめていらっしゃいます。お話に挙がった不動産以外のセクターは現状いかがでしょうか?
最近まで「強かった」のはヘルスケアです。バイデン政権はオバマケア(医療保険制度改革)を推進していますから、政策面での後押しもあり、全米規模で医療保険や医療サービスを提供するユナイテッド・ヘルスグループ(UNH)を筆頭に、ヘルスケアセクター全般がディフェンシブ銘柄として選好されていました。しかし、バイデン政権も波乱含みで、今後どうなるかは分かりません。エネルギーセクターも強かったのですが、インフレの進行によって先行きの見通しが難しい状況ですね。
今、比較的好調なのはコストコ・ホールセール(COST)やペプシコ(PEP)など、一般消費財の中の食料品やドリンク関連企業です。
相場の急変動で痛感したエントリータイミングの重要性
――個別銘柄を選ぶ上では、どんな点を重視されていますか?
最近、特に重視しているのは、フリーキャッシュフロー(FCF、純現金収支)です。市場でも、余剰資金のない企業の株式は売られています。利益を出していることに加え、キャッシュフローが潤沢であることがポイントかと思います。
実際に購入したい銘柄が出てきたら、チャートを見てINとOUTのタイミングを考える必要があります。どんないい銘柄であっても、エントリータイミングは大切です。これは、ここ1年半ほどの相場と対峙し、失敗を重ねるなかで痛感したことです。タイミングを誤ったことにより、株価が5分の1や10分の1まで下がった銘柄もあるので。
――個別株投資の場合、適切な保有銘柄数はいくつぐらいでしょうか。
私は一番多い時で20銘柄ほど保有していました。しかし、それぐらい多いと管理しきれず…。決算結果や企業動向をしっかりと追うという意味で、私にとっては5銘柄ぐらいが適切だと感じています。多くて10銘柄ですね。
――損切りルールは必要だと思いますか?
人間が機械的に損切りするのは難しいのではないでしょうか。特に個別銘柄に投資する場合、銘柄には旬があり、知らないうちに成長が止まっているかもしれません。長期目線で高配当銘柄に投資するなら話は別ですが、やはり損切りルールは必要かと思います。
その際に気をつけたいのが、購入価格からの損切りではなく、利が乗った価格からの損切りにした方がいいと私は考えています。投資家は、「元値より損をしなければいい」と考えがちですが。
今強いのは一点集中型ビジネスの企業
――以前は米国株投資においてインドの成長にも注目されていたようですが、現在はどうですか?
2年ほど前はアマゾン・ドットコム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)をはじめ、名だたるEC(電子商取引)企業やゲーム企業がインドに進出していて、インドの経済成長の恩恵を受けると考えていました。しかし、この1,2年で状況が大きく変わりました。
ドルが独歩高の今は、国内需要の強い企業が買われています。一点集中型のビジネスの方が、無駄な投資資金を投入せずに済みますからね。中国や欧州経済の先行きが見通せないこともあり、GAFAMのようなグローバルにビジネスを展開している企業は苦戦しています。
――そのGAFAMですが、足下では「成長性に陰りが見えた」といった指摘もあります。もみあげさんは、どうご覧になっていますか?
確かに、今はどこも人員削減に着手していて、目先はネガティブに見えるかもしれません。しかし、各社がコロナ禍で経営を拡大しており、それを一旦シュリンクして適正化を図っているという見方もできます。
私は、そうした中からいずれ何社かが成長すると考えています。銘柄の入れ替わりもあるでしょうし、それが4社になるか5社になるかも現時点では見えていませんが。
>> >>【後編】“もみあげ流” 高配当株の選び方、高ボラティリティに耐える投資戦略
※本インタビューは2022年7月20日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。