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米国株の高配当銘柄の選び方、チェックすべき3つのポイント

――高配当投資については、どのような考え方をお持ちですか?

私自身はどちらかと言えば高配当投資よりも成長株投資のスタンスですが、高配当投資は特に資産規模の大きい方にとって悪くない選択肢だと考えます。例えば、S&P500が年初から20%くらい下がっている今のような状況下においてFIRE(経済的自立と早期リタイア)で目安とされている「4%ルール(生活費として総資産の4%を取り崩す)」を実践している方にとっては、メンタル的に相当きついでしょう。しかし、高配当銘柄に投資していれば配当収入がありますから、株価の下落がそこまで気にならないのではないでしょうか。

――高配当銘柄を選ぶ際には、どのような点に気をつけたらいいでしょう?お勧めの高配当銘柄がありましたら、教えてください。

セクター・配当性向(純利益に占める配当金の割合)・エントリータイミング、気を付けたいのはこの3つです。中でも、配当性向は必ずチェックしたいですね。配当性向が極端に高い企業は、投資家を確保するために無理して配当を出している可能性があります。とはいえ、配当性向が75%という高水準でも買えたアッヴィ(ABBV)のような例もあります。アッヴィはヘルスケアを代表する銘柄で、これまではセクターの後押しもありました。ですから、先ほど挙げた3つの要素を勘案して銘柄を選ぶことが大切だと思います。

高配当個別銘柄よりも高配当ETFへの投資の方が、難易度が下がります。私は現状においては高配当ETFは保有していません。しかし、投資を検討するなら「XLRE(不動産セレクト・セクター SPDR、ベンチマークはReal Estate Select Sector Index)」か「VYM(バンガード・米国高配当株式ETF、ベンチマークはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックス)」が良いのではないかと思っています。

――投資に関する情報収集で大切にしているのはどんなことですか?

情報は一次情報を取ることが大事だと考えています。私自身、経済情報はブルームバーグなどのニュースサイトを見ることが多いのですが、例えば、米国の雇用統計が発表される時は必ず労働省労働統計局の公式サイトの情報を確認します。また、YouTubeのような動画情報はどうしても発信者のバイアスがかかってしまうので、私自身は観ないようにしています。

高インフレの米国で気づいた変化

――さて、日本でも値上げラッシュが起きていますが、米国はさらに熾烈です。米国在住のもみあげさんが日常生活の中で、インフレを実感するのはどんな時ですか?

食料品といい、ガソリンといい、ありとあらゆる物の値段が上がっています。レストランで食事をすると以前は20~25ドルくらいでしたが、今は30~40ドル。軽くコロナ前の1.5倍くらいにはなっている印象です。このせいで、お金が貯まらなくなりました(笑)。買い物に行くたび値上がりを目にする状況なので、皆フラストレーションを抱えていると思います。バイデン政権の支持率が過去最低を更新するのも当然のことでしょう。

――インフレ対策として行っていることがあれば教えてください。

できる限り自炊することでしょうか(笑)。個人的には、ドル資産を多めに持っているので、今年に入ってからのドル高・円安で円建ての資産価値が大きく増えています。資産ポートフォリオの中で通貨を分散させておくことも重要だと思うようになりました。

周囲を見ていて、「インフレ対策でうまくやっているな」と感じるのは不動産を安い価格で買っていた人ですね。2020年後半から住宅を購入する人が多かったので…。

「投資熱が冷めた時こそチャンスがある」

――これから投資を始める20~30代の方にメッセージをお願いします。

コロナ禍で高まっていた投資ブームもだいぶ沈静化しました。しかし、実は、盛り上がっている最中よりも、今のように投資家から見向きもされないような時の方が投資を始めるチャンスだという見方もできます。株価が高くてとても手を出せなかった銘柄が、今なら買えるかもしれません。

投資は特別なことではありません。ですから、「自分はすごいことをやっているんだ」とは思わずに、粛々と取り組んでいけばいい。コツコツと買っていたら、いつの間にかひと財産になっていたというのが理想です。

20~30代はリスクが取れる年代ですから、中にはテンバガー(10倍株)を狙うなど投機的なトレードを志向する方もいるでしょう。実際、私もそういう時期がありましたし、それが駄目とは言いません。ただ、そうしたトレードは、ゼロになっても構わない余裕資金の範囲でやるのが鉄則です。

――投資を始めるにあたって、まず考えるべきことは何でしょうか。

まず、「投資対象として何を選ぶか」よりも「投資で何を成し遂げたいか」を先に考えることが大切です。投資における目標・テーマ設定ですね。

――具体的には、どんな目標・テーマを設定するのがいいのでしょうか?

できる限り長期目線で投資することが大切です。特にこの1年ほど、米国株式市場は個人投資家にとって大変難しい状況になっています。ボラティリティが大きいため、短期目線で目標を設定すると失敗した時に取り返しがつかなくなります。そのため長期目線で、かつ無理がない目標を立てることが大事です。

例えば2021年ぐらいまで年率10%で資産が増えていたとします。それで今後も10%上昇するという前提で目標を作ってしまうと、とんでもない目標額になってしまいます。投資でお金が増えることを当てにすると人生設計に狂いが生じる可能性があります。

そもそも資産形成において投資はあくまで補助的な役割です。年3%や4%のリターンでも良いと思います。株式はあくまでリスク資産ですから、その点をわきまえたほうが良いでしょう。

――差し支えなければ、もみあげさんご自身の目標もお教えください。

私の場合は、「経済的に会社に依存しない状態」を目指しています。そのために必要な資金が5000万円になるのか、1億円になるのかはその時の状況によりますが、あと5年くらいで「経済的自立」を実現できたらいいなと思います。

――ありがとうございました。

※本インタビューは2022年7月20日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。