先週、欧州中央銀行(ECB)が「マイナス金利」を採用したとニュースになりました。
といっても指標となる政策金利をマイナスにしたわけではありません。
政策金利は0.1%引き下げ、過去最低の0.15%です。

何をマイナス金利にしたかというと、民間銀行が中央銀行にする預金の金利です。具体的には民間銀行の余剰資金の預金には一定の手数料の支払いを求める、その利率はマイナス0.1%にするというものです。
中央銀行に預金をするとお金が減る!だから預金をしないで民間企業などに貸し出しをしてくださいね、ということです。
その上、民間企業に貸し出しをするのであれば、4年間という比較的長期間、低金利固定で融資もしますよ、という措置も同時に決定しています。
低インフレ状況の打開および、ユーロ高対策としての金融緩和(+銀行融資促進策)とのこと。

ユーロ危機と声高に騒がれていた時期からは沈静化したように見えていますが、ユーロ圏の複雑な基本事情、共通通貨の下で財政赤字を抱えた多数の諸国という現実、および経済状況が劇的に改善したわけではありません。
その上ウクライナ情勢など不安要素があるにもかかわらず、昨年からユーロ高傾向が続いてきました。
経済状況が悪く、低インフレ下の通貨高、というと経済の教科書の定義からは外れているように見えますね。

そこにはいくつかの理由があると言われます。
昨年ユーロ圏では経常黒字が拡大しました。一般的に経常黒字拡大というのは通貨高につながる条件と言えます。
ただ、その要因は貿易黒字の拡大で、実は債務危機国における輸入急減が寄与しています。(ドイツは輸出堅調の一人勝ち)もちろん優遇条件での国際支援があり、PIIGSの状況は改善しつつあり、その辺りから景気回復期待ということなのでしょう。

また、ユーロ圏における低インフレ継続は、デフレリスクが非常に高いと見られています。デフレ経済の下ではモノの値段が下がる、つまりは貨幣価値が高まるということ。デフレリスクがある⇒ユーロ高というのも一理あると言えなくもありません。

そして、昨年暮れには噂されていて「マイナス金利導入」リスクが遠のいた、金融政策は行わないので、安心してユーロ買い・・・という状況もありました。

最後の金融緩和策に関しては、前述の通り先週実施されましたが、これら通貨高の理由の説得力は今一つ弱いようにも感じます。
為替市場がいかに参加者(投資家)の「気」によって動くのか、ということの表れだと言えますね。相場は生き物、理由は後付け、流れと勢いを見るべしということでしょうか。
だからといって、経済理論や理由をないがしろにはしないでくださいね。
ちなみに、低預金金利下でのATM手数料、送金手数料はマイナス金利と同じ効果になることをお忘れなく!

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員