不安定な雇用や物価高、ハイテク株の売りや台湾を巡る米中問題などが懸念材料に

2022年7月下旬の中国本土市場・香港市場は下落となっています。2022年7月14日終値から2022年8月1日終値までの騰落率は、上海総合指数が-0.7%となり、香港ハンセン指数は-2.8%となっています。

上海総合指数はちょうど200日移動平均線で頭を押さえつけられる形で株価が下がってきており、株価は上向きの50日移動平均線を割り込み、100日移動平均線で支えられるかどうかというところです。

香港ハンセン指数は200日、100日、50日移動平均線を共に株価は下に突き抜けており、下値を模索しているような株価推移となっています。上海総合指数は横ばい気味の株価推移となっています。

中国当局からの政策期待はある一方で、7月28日に行われた中国共産党中央政治局の会合では、前回の会合では2022年の5.5%前後の成長目標を明確に堅持する方針が明確に示されました。そのような経緯がありながら、今回の会合ではGDP成長目標については触れられなかったことから、GDP成長目標を達成するための景気刺激策は打たれないのではないかとの懸念も出てきています。

今回の会合ではそれよりも雇用と物価を安定化させることや、不動産市場の安定化が打ち出された形です。

香港ハンセン指数は上海総合指数よりも軟調な株価推移となっていますが、特にハイテク株が売られている印象です。

また、台湾を巡る米中の意見の対立が浮き彫りとなる中、ペロシ米下院議長が8月2日にも台湾を訪問する見通しと伝わり、中国当局の反発を生みそうです。

そのような中、7月29日はアリババ創業者のジャック・マー氏がフィンテック企業のアント・グループの支配権を手放す計画という報道が材料視され、アリババ・グループ・ホールディング(09988)の株価が大きく下落しました。

それによって美団(03690)、小米(01810)なども大きく株価が下落しており、まだまだIT企業が全体の足を引っ張っていると言った印象です。その他、中国で新型コロナウイルスの感染者数が増加していることへの懸念から消費関連株も売られています。

中国の経済指標は軟調な数字が続く

当該期間の中国の経済指標を見てみると、第2四半期のGDPが前年同期比0.4%増(市場予想1.2%増、第1四半期4.8%増)、6月の鉱工業生産が前年比3.9%増(市場予想4.0%増、前月実績0.7%増)、小売売上高が3.1%増(市場予想0.3%増、前月実績6.7%減)、固定資産投資が6.1%増(市場予想6.0%増、前月実績6.2%増)となっています。

また、中国国家製造業PMIが49.0(市場予想50.3、前月実績50.2)、中国国家非製造業PMIが53.8(市場予想53.9、前月実績54.7)、Caixin中国製造業PMIが50.4(市場予想51.5、前月実績51.7)となっています。

鉱工業生産や小売売上高は好調でしたが、PMIはいずれも市場予想を下回っており、特に中国国家製造業PMIは景況感の境目である50を下廻っている状況で、中国経済の減速を示しています。

今後の中国本土市場・香港市場の見通しですが、まずは新型コロナウイルスの感染者がどうなるのかが焦点の1つです。

中国ではゼロコロナ政策が今も続いており、製造業の中心地である広東省深セン市では新型コロナウイルスの感染者数が増えており、サプライチェーンの混乱懸念も高まっているところです。もしも都市封鎖(ロックダウン)などが発生した場合は株価への悪影響も避けられないところでしょう。

また、経営不振に陥っている不動産会社の問題も大きな問題となる可能性があります。中国当局は経営不振に陥っている不動産開発会社を支援するため、最大440億ドルの基金を創設する計画だとしていますが、それで不動産市場の混乱が収まるかどうかは不透明なところです。

その他、台湾を巡る米中問題やIT企業への締め付けがまだ完全に終わっていない点も香港市場にとっては問題です。そして中国経済の減速感があります。以上のことから、目先の中国株はやや軟調な株価推移が続きそうです。もちろん、長期目線では優良株の買いの好機であるという見方はそのままで良いと思います。