先週、オバマ米大統領が来日、短い日程を慌ただしくこなしていきました。日米の信頼回復、防衛(尖閣問題)、TPP交渉・・・注目点は山積みでしたが、前者二つについてはまずまず、三つ目については評価が分かれているようです。
個人的には、共同記者会見時に安倍首相がバラク、バラクとオバマ大統領のファーストネームを連呼していたのに対し、オバマ大統領が「安倍首相」で通したところに、取り繕った「信頼関係」が見えて、少々寒々しさを感じましたが・・・。

世界の要人動向は注目を集めるものですが、市場はグローバルに連動していますから、ニュースがどういった形(主に英語)で世界に配信されるかで反応は変わります。日本語の声明は真意のわかりにくい表現(「官僚用語」とも呼ぶそうです)がよく使われますね。

1. 「建設的な(率直な)意見交換」

2. 「大きな前進、進展」

3. 「大筋合意」

並べて見れば1→3の順に成果があったことは想像できますが、単独で見るといずれも前向きの好印象を受けます。(そういう印象になるような表現を選んでいるので)
ですが、政治の専門家によれば、1.の真意は「両者、言いたいことを言いっぱなし」「平行線」で、2.は「相手の言葉に耳を貸して歩み寄りを検討中」、3.でようやく「ゴールが見えてくる」というレベルとのこと。
今回、共同声明では「前進する道筋を確認」です。なんとも捉えにくい表現ですね。
ただし政治の世界では「合意」が全てではなく、いかに譲らずに主張できるかが重要になることもありますので、全体像を見る必要があります。

さて、渦中のTPP交渉ですが、実際どのように私たちの生活に影響を与えるものなのでしょうか。こちらも「どの立場にいるのか」がポイントです。

まず、農林水産関係の方は大反対 です。
安価な海外の生産物が入りやすくなることは、これまで手厚く守られていた分野の人々にとっては脅威となります。
一般消費者にとっては、自身で安全性と安価を量りにかけて選択する必要が出てくることになりますが、選択肢が増えることで生活防衛の点ではプラスと言えるのではないでしょうか。
では経済全体としてはどうかと言うと、安価な商品流入により、せっかくインフレ化しつつあるのにデフレに逆戻りするという不安の声もあります。が、グローバル市場での競争激化は工夫等によって競争力を養い、強い生産者を育てることも期待できます。また、TPPは相手国の関税がなくなる(低くなる)ことでもあり、輸出力強化、世界各国、地域とのビジネスチャンスの拡大もあるでしょう。

一つの事象をどの視点で捉えるかで物事の見え方は大きく変わります。市場は多数決の世界で、多くの人が思った方向に向くものです。
できるだけ多くの情報を集め、偏った見方で判断しないようにしたいですね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員