アルゼンチンペソの急速な通貨安から世界の市場に一気に動揺が拡がりました。アルゼンチン不安・・・またか!というのが正直なところ。

遡ること13年、2001年にアルゼンチンは対外債務のデフォルト(=債務不履行)宣言をしました。他国に借金が返せない状況に陥ったということです。

その借金の相手は「他国」のみならず、他国の一般市民、日本国民も多く含まれていました。当時、高金利で人気のあったアルゼンチン国債(円建て=サムライ債)は多くの人(地方自治体も含む)が保有しており、利息を受け取れなくなっただけでなく、大幅な元本カットという悲劇に見舞われました。

実は90年代のアルゼンチンは、1994~95年のメキシコ通貨危機直後は影響があったものの、「中南米の優等生」として、海外からの資本流入に支えられ、高い経済成長率を誇っていたのです。

1997~98年にアジア・ロシア通貨危機、99年のブラジル通貨危機と続き、優等生であったはずのアルゼンチンでも2000年頃から金融市場が不安定になり、翌2001年に前述のデフォルト宣言に至ったわけです。
その急落、暴落ぶりはまさに「落ちるのは速い」という言葉通りでした。
ただし、その後アルゼンチンは2011年まで急激な経済回復を遂げています。特に2003~7年は主要新興国の中でも際立った成長力を見せ、経常収支やプライマリーバランスの健全さも専門家が目を見張るほどでした。

ところが、わずか2年後には再び現在の状況です。
もちろん2012年以降、一部の専門家はそのバラマキ政策等に警鐘を鳴らしていたのですが、一般広くには危機感が拡がらず、今回突如として通貨危機に陥った印象を与えています。

2001年の時は、やはり情報が個人投資家まで拡がるのに時間を有し、「優等生」の転落は「突如」の印象が強かったものです。

これだけネットが社会に浸透し、個人投資家の裾野が拡がった現在でさえ、遠い新興国の情報はなかなか入手しにくいものと言えるでしょう。(海外のニュースを英語やスペイン語などで入手している場合は別です。)
市場においては、今回のアルゼンチンペソ急落による不安の連鎖反応は世界中に一瞬のうちに広まりました。それは新興国のみならず先進国にも一斉に、です。

新興国に投資する場合、以下のリスクをあらためて、十分に心得ておくことが必要でしょう。
●通貨、金利、株価共に乱高下する可能性が高い
●情報は先進国のものより質・量共に少ない
●他の新興国の不安に連想から連鎖しやすい(ただし現在は新興国のみならず先進国も)
●政治・政策・軍事等不安定になりやすい

大きなリターンにつながる可能性が高い分、高金利債券であっても通貨急落があればあっという間に金利分など吹き飛んで元本割れも起こすということを再認識し、資産配分が新興国投資に傾き過ぎないようにしましょう。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員