「良い物価上昇」「悪い物価上昇」・・・
ここ数日ニュースなどで目にする機会が多い言葉ですね。

物価が上昇することをインフレーション、下落することをデフレーションと呼びますが、ここ10年以上日本が陥っていたのが後者の「デフレ」ですよね。
物価が下落する、モノの値段が安くなることは消費者としては嬉しいようでいて、経済的な見方をすれば良いことでないことは周知かと思います。
モノが安くなる⇒企業が儲からない⇒賃金が安くなる⇒買い控えが起こる⇒・・・という不況サイクルはデフレスパイラルとして知られています。

今年、欧米諸国にならって日銀も物価目標(2%)を導入しました。
物価目標はインフレターゲットとも言い、つまりはインフレーションを目指すこととなります。

インフレというと、新興国においては常に中央銀行が抑えることを目標としている対象であり、国民生活に直接打撃を与える可能性の高いモノです。
そうした新興国におけるインフレは、時として急激でその国の経済を悪化させる要因となりえるものですが、景気活性化には「適度な」インフレは必要不可欠です。

物価が上がる前に買い物をしよう!と消費者心理を刺激⇒消費活動が活性化⇒企業利益の向上⇒賃金・ボーナス増加⇒個人消費・投資のますますの増加⇒・・・
といった景気回復シナリオが考えられます。

上記のシナリオのように景気が回復して社会全体が潤っていく理想的な物価上昇であれば「良い物価上昇」です。
ところが、ちょっと順番がずれてしまうと、たとえ新興国で起こるような急激なインフレ(=ハイパーインフレ)ではなくとも十分に国民生活の打撃となってしまい、結果として再び不況サイクルに陥る可能性もあり、それが「悪い物価上昇」です。

資源価格の上昇や円安による輸入物価の上昇⇒消費者心理が上向きに働く前に生活物価などが上昇⇒消費拡大に至らがないがゆえに企業業績も回復しない=賃金も上昇しない⇒家計の圧迫・買い控え⇒再びデフレに・・・!

「消費者物価指数が上昇に転じた」
という直近のニュース一つを見ても、それが景気回復につながる良い上昇なのか、デフレに舞い戻る可能性のある悪い上昇なのか、を判断していかなければいけないということですね。
各種報道では、いまのところ方向としては良いけれど「良い物価上昇」の途半ば・・・と、一定の評価はしつつも手放しでは喜べないといった見解が多いようです。
かなり悲観的なコメントをしている専門家もいらっしゃいます。

こうした判断に専門家のコメントももちろん大切ですが、生活者として自身の周囲を見回した上での生活実感も十分に役に立つ材料になることでしょう。
景気は「気」から、ですからね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員