先週土曜日の日経新聞で下のような記事がありました。
「金市場、マネー流出続く」
東京商品取引所の金先物価格が約11カ月ぶりの安値を付け、今年2月の過去最高値から22%安になったこと、欧州信用不安の和らぎや米国景気回復への期待から、「安全資産」である金からの投資マネーが流出している旨記載されています。

相場としては上記の通りですが、個人投資家としてはいくつか別の視点を持つ必要があるのではないでしょうか。

まず、相場を動かすような「投資マネー」とは、その多くは巨額な資金を動かすプロの投資家、投機家のものです。それだけ情報収集力、分析力にも長けていて、動きはとても速いのです。
つまり、今回金市場から流出しているマネーは流入も速いタイミングで、利食いをして出て行っているものも多いことでしょう。

こうしたプロの動きを後追いしたり、向こうを張って闘いを挑んだりするのはいずれも負ける確率の高い投資です。

そもそも本当に欧州信用不安は和らいでいるのでしょうか。米国景気回復は、確かにバーナンキ発言に見られるように将来的に期待はできるのかもしれませんが、市場はまだ不安定に右往左往続けているのが現実ですよね。
記事の見通しは事実かもしれませんが、個人投資家にとっては相場の見方とタイムスパンに少々ずれがあるようにも感じられます。

基本に戻って投資について考えてみれば、資産保全の方法で大切なのは分散投資です。その分散投資は内外の株債券といった伝統的な金融資産の他に第3の資産としてコモディティなどを取り入れることは広く勧められていますね。

個人投資家にも身近なコモディティ投資の一つが金です。
ただし、商品市場というのは、プロを中心とした市場であること、金が昔から「有事の金」と言われるほど比較的安全性が高いことなどから、個人投資家の金投資は短期売買ではなく長期保有が勧められてきたはずです。

事実、金価格は冒頭にあるような急落は見受けられるものの、それを長めのチャートに差し替えてみると見え方が変わってくることがわかります。
ここ半年くらいチャートで見れば、確かに金相場は右肩下がりの不安定な動きですが、5年、10年といった長期チャートを見れば、上昇基調にあったこともお分かりいただけるでしょう。

金は一般に伝統的な金融資産と逆相関な動きをすることでも知られています。(ごく最近だけ見れば相関性の高い動きもしていますが・・・。)株価が急騰してきた状況であれば、金が下落基調になるのはごく自然な相場でもあります。

金価格が「過去最高値」をつけているようなときに購入をするのは個人投資家にはリスクが高いと感じられるかもしれません。
長期保有を前提に少しずつ買い足していく場合、なるべく安い価格でスタートしたいというもの。そう考えると今の金市場の見方も少し変わってきませんか?
廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員