先週、様々な表現で日銀の新・金融緩和策が報じられ、それは日本のみならず世界の市場で大きな反応を呼びました。
日本株も一時13,000円の大台に乗り、ドル円は97円台後半まで上昇しています。
そもそも日銀総裁の名前を冠して政策が報道され、市場が大きく反応するなどここ久しくなかったのではないでしょうか。
世界の中央銀行総裁、特に米国のFRB総裁にいたっては、その一挙手一動が市場に注目される存在です。自国の通貨や金利政策が世界に影響を与える、その担い手という、まさに市場の「要人」です。
それに対し、これまでの日銀(総裁)は市場の事前予想を(良い意味でも)裏切ることのない、サプライズのない存在で、市場に何かを発信するという影響力は小さかったように思います。
だから自国通貨である円が大幅に高くなろうと、それは「円が強い」のではなく「ドル(ユーロ)が弱い」ことの裏側にあるだけの現象とも言えました。
黒田総裁の前職はアジア開銀総裁ですから、「世界経済を踏まえる迅速な行動」という意味で、歴代日銀総裁とは一味違うかもしれませんね。
さて、今回の黒田日銀による「異次元」の金融緩和策と言われますが、そもそもどんなもので、何がサプライズだったのか、というのは金融関係者や投資慣れした方以外にとってはわかりにくいものかもしれませんね。簡単に説明しましょう。
1. 量的・質的金融緩和導入
これまでも金融緩和策は行われてきましたが、主に政策金利(無担保コール・オーバーナイト)の誘導目標を提示するというものでした。
マネタリーベース(現金+日銀内の準備預金)2年間で倍増という新たな目標、なおかつ期間も合わせて明示した点が「量的・質的」に大きな違いです。
2. 国債買入れ
これまでも「買いオペレーション」と言われる手法で、日銀が市中の国債などを購入することで市場に資金供給するということを行ってきました。
買入れ対象の国債は短期~10年程度の年限が中心で、償還期限3年以内に限定していましたが、今回、市場の予想を大きく超えた額(予想の月4~5兆円に対し月7兆円)、かつ40年債という超長期債を含む全ての年限の国債が対象となりました。
3. リスク性資産買入れ
市場規模もそれほど大きくなく、またリスク性資産であるETFやREITの買入れ額は増えても少額であろうという市場の予想を超え、これも大幅に拡大しました。
大判振る舞いとも言える大金融緩和策だからこそ「異次元」なんですね。
大手術は、それだけ副作用の心配も大きくなるものです。
市場には懸念の声もありますが、まずは実体経済を景気拡大、そしてデフレ脱却が軌道に乗るよう黒田総裁の手腕に期待したいところですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員