先週のマーケットは地中海の小国キプロスの動向で右往左往させられたと言えそうです。

キプロス・・・どこ?という方も多かったのではないでしょうか?それくらい日本では馴染みが薄い国かもしれません。
人口わずか90万人のキプロスで、銀行のとりつけ騒ぎが勃発しました。
小口預金者を含めて銀行預金残高に対して課税すると突然政府が発表したため、預金者が預金下ろしに殺到、現金が足りなくなった銀行側が窓口を閉鎖するという信じがたい事態です。

小国とはいえ、れっきとしたユーロ加盟国。当然のことながら欧州不安が一気に再燃することになりました。
結局、全預金残高に対する課税ではなく、国内最大手のキプロス銀行の10万ユーロ(約1200万円)超の預金に25%課税という方向でEU、IMF、欧州中央銀行(ECB)の代表団からの合意が得られたとのこと。(23日)

たとえ高額預金者に限定されたとはいえ、預金者が手を出せない状況下で強制的に預金を目減りさせられてしまうわけです。リスク性資産ではない、元本割れのないはずの預金、しかも国内最大手の銀行に預けていて・・・!
「高額預金者」とひとくくりにされていますが、老後資金としてコツコツと貯めてきた人もいるでしょう。リスクを取りたくなくて全資産を預金にしていた人もいるかもしれません。

このキプロスのニュースは遠い地中海の他人事では済まされないものです。アベノミクスが好調、景気回復が目に見えてきている日本でそんな不吉なことは考えたくもないですよね。そもそもの欧州危機の財務不安と日本の財政赤字は一見似て非なるものですし、キプロス政府のような横暴な施策を日本政府が行うことはないと信じていますが・・・。

リスクは預金残高に対する課税という点だけではありません。
アベノミクスではインフレ目標を掲げ、大胆な金融緩和を通して景気回復を図っています。もし目標どおり実質インフレ率が上昇(物価上昇)しても、預金利率が低いまま(金融緩和策の影響で)に留まるとどういうことになるでしょうか?
これまで買えたものが同じお金では買えなくなる、つまり預金の目減りと同様の状況が起こるのです。

キプロス・ショックには個人金融資産の大半を預貯金にしている日本で考えられる不測の事態に備えるヒントがあると言えます。

●全資産を(たとえ預金でも)一つの金融商品にまとめることはリスクが大きい●インフレ期においては、預金は実質目減りするリスクがある
●金融機関をも分散しないとリスクが大きい

預金だけではなく、インフレに強い株式、不動産、金などの資産に対しても分散投資することが自身の資産を守り、育てる上で大切だということです。

今年は桜の開花が早く、お花見のチャンスを逃しそうな方もいるかもしれません。投資の好機も突然来るものですから、焦らず、迷わず、しっかりとチャンスを掴んでいきましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員