アベノミクスは海外からも一応一定の理解を得られた形となり、ドル/円相場は比較的落ち着いている模様。今週の日銀総裁人事でまた相場に動きが出そうですね。

これまで市場の動きは「期待」と「予想」で実体経済に先行する旨書いてきました。例えば高い株価、高いドル/円相場は保有株式や保有海外資産の評価額を高めてくれますので、「景気が良い気分」にはなるものです。
ですが、その高値で売り抜けて利益確定して初めて懐は暖かくなるもので、「絵に描いた餅」だけでは実体は伴いません。

企業は決算期があり、それに合わせて利益を確定したり評価をしますが、当然「評価額」だけでは本当に潤ったわけではなく、従業員や株主に還元してもらえません。

海外で売上を出している企業(輸出企業)が、できるだけ高いリターンを確保するために何をするかというと、為替相場下落のヘッジもしくは利益確定のための手段を講じるのです。

その方法として先物為替予約や為替オプションといったデリバティブ取引があります。
個人投資家にはまだ馴染みが薄く、利用できる場も少ない取引ですが、これまで為替市場が個人投資家向けに拡大、開放されてきたスピードを考えると、今後こうした取引を個人も自在に行える日が近いように思います。

今日は上記のうち、先物為替予約について簡単に説明しますね。
先物為替予約とは直物為替=スポット取引に対し、フォワード取引と呼ばれるもので、将来の一時点で、一定の価格(外国為替レート)で一定の金額の売買を現時点で約定する取引のことです。
企業などと銀行、インターバンク(銀行間)などで行われる相対取引です。
以前のコラムでも取り上げたことがありますので、その仕組み等につきましては下記をご参照ください。

第234回 先物為替予約とNDF
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2011/07/11.html

この取引は「予約」という呼び方をしますが、「売買取引」という扱いですので、取り消しも変更もできず、期日に受け渡しを行う義務が発生します。
将来時点の為替状況によっては得られたかもしれない為替差益を放棄することも起こりますから、権利の取引を行うオプション取引と異なる点です。

現在の相場をベースに将来時点の取引レートを確定しますので、企業内為替レートよりかなり円安に進んでいる今、既に大幅な為替差益が計上されていることになります。
これは「絵に描いた餅」ではなく実現利益、実体経済の実ということになりますね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員