今週は4年に一度の米大統領選投票があります。
先週末の10月の米雇用統計発表では、失業率は悪化したものの、非農業部門雇用者数や民間雇用者数の伸びが予想を大幅に上回り、この結果はオバマ大統領にとっては再選の追い風になっているとも言われます。

世界の政治・経済において米大統領の選出は大きな意味を持ちますが、今回市場は既に上記の状況を織り込んでいるともみられ、接戦という割には落ち着いた反応が予想されます。

為替市場ではオバマ大統領再選の場合「ドル安」、ロムニー氏当選で「ドル高」というコンセンサスがあるようです。そのコンセンサスの背景の一つに「財政の崖(フィスカル・クリフ)」問題が挙げられています。

「財政の崖」問題とは・・・

1.ブッシュ減税が2012年末に失効することで起こる「実質的増税」

2.2011年に米債務上限が問題になった際に財政赤字削減策として決められた2013年から始まる「強制的な歳出削減」

1.2.が2013年から同時に起こることで、あたかも崖から落下するような急激な緊縮財政となり、景気後退に結び着く懸念が強いというもの。
今回の雇用統計の結果は米景気回復を期待させるものですが、「財政の崖」問題は景気回復には水を差すことになります。
ブッシュ減税に否定的なオバマ大統領再選の場合、「財政の崖」問題への流れは止まらず、景気後退となればFRBも追加緩和策QEⅣを打ち出す可能性が高まるため「ドル安」であるというストーリーです。
もしロムニー氏が当選すれば、同じ共和党のブッシュ減税は延長されやすくなると見られるため、景気への悪影響も限定的、追加緩和策がなければ「ドル高」と見られているのです。

本当にコンセンサス通りの動きになるかは実際に選挙が終わってみないとわからないですね。
緊縮財政が景気停滞期と重なれば景気への打撃は大きなものとなりますが、景気が底堅い状況であれば上記に想定される流れは変わってきます。
また「財政の崖」問題回避のために、今後の経済政策(為替政策)が大きく方向転換する可能性だってあるわけです。

大統領選の結果がどうあれ、「財政の崖」回避に向けて全力で対策が練られる可能性も高く、つまりは大統領が誰かということの景気への影響は意外と限定的なのかもしれません。

といっても、目先の市場の動きと来年以降を見据えた長い目で見た動きは必ずしも一致しませんから、自分の投資スタンスを踏まえた上で流れを見るようにしてくださいね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー