毎週月曜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問に広木隆が回答いたします。回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

Q.米国株S&P500の今後の見通し

Rooibos様からのご質問

米国株S&P500の今後について、どのように考えられていますか?

回答

先週2022年4月22日のストラテジーレポート「しばらくは上値が重い展開 GW明けから潮目が変わるか」で書いた通り、現在の米国株は金利上昇に対するバリュエーション調整をしている過程にあります。PERは金利が上昇すれば下がる必要があります。

PERの低下には、①株価(P)の下落か、②利益(E)の上昇の少なくともどちらかが必要ですがS&P500の予想EPS(12ヶ月先)は決算発表シーズンが始まってからほぼ横ばいで変化がありません。GAFAMの決算もまちまちです。こうした環境では株価の上値が重い状況が続くでしょう。

5月のFOMC通過後、インフレ指標の落ち着きなどをきっかけに長期金利上昇が頭打ち傾向を明確に示せば、再び株価も上向くでしょう。それがなければ米国企業の業績モメンタムが再度、力強く伸びてくるまで待たざるを得ないと考えます。

●関連記事:しばらくは上値が重い展開 GW明けから潮目が変わるか(2022年4月22日)

Q.日本国債が大量に売られることになった場合株価にどう影響しますか?

キツツキ様からのご質問

利上げできない日銀が、結果的に日本国債が大量に売られることになるような発表を突如するのではないか、と今朝のモーサテで解説されていたと思います。

そうなるなら、日米の株価はどうなりますか?

回答

モーサテ「プロの眼」で加藤出さんがご解説されていたのは日銀がイールドカーブコントロール(YCC)をやめる可能性についてです。

日銀のYCCについては、ゼロ%を中心に上下0.25%程度としている長期金利の変動許容幅の拡大や、長めの金利目標の10年から5年などへの短期化もあり得ることは市場でも従前から議論されてきました。

ただ、それはYCCの弾力化というようなもので、それを市場にどう通知するかにもよりますが、債券の投資家が一斉に売るような事態にはならないでしょう。

例えば0.25%を超える金利上昇を認めるということは、その水準での日銀の買い入れがなくなることを意味しますが、日銀という絶対的な買い手がいなくなるマーケットで売りにいくような投資家は少ないはずです。

仮にそうした売りで金利が上昇したとしても、カネ余りで運用難に悩む国内運用機関は喜んで国債を買うでしょう。結果的にあまり大きな混乱は起きないと思います。

Q.脱炭素化の恩恵を受ける銘柄はありますか?

侍ジャパン様からのご質問

今後も脱炭素化の流れは加速していくと思います。

そうすると、原子力、蓄電池、送電線網整備が重要になってくると思っています。

これらの恩恵を受ける銘柄はどこでしょうか?

回答

「今後も脱炭素化の流れは加速していく。そうすると、原子力、蓄電池、送電線網整備が重要になってくる」これは否定しません。ただ、次の「これらの恩恵を受ける銘柄はどこでしょうか?」という質問には、「ちょっと待ってください」と申し上げます。

少し長くなりますが、DX関連の最高の名著『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』のあとがきで富山和彦さんが述べていることを引用します。

 昨今話題のゼロエミッション、グリーンイノベーションなどもおそらくはその典型である。例えば自動車の電動化について、「それを実現する物質的なキーエレメントは車載電池だ」となる。そこで「電池開発に多額の投資をしよう、そして世界に先駆けて新しい電池セルを大量生産し、その最新電池を搭載した自動車を世界で売りまくって、フルEV世代の電池産業と自動車産業で世界の覇者になろう」というシナリオ展開、いかにも20世紀の工業化社会のアーキテクチャを前提にしたシナリオ展開になりがちだ。

 しかし、である。似たようなシナリオは、液晶ディスプレイでもあったし、太陽電池セルでもあったし、液体リチウムイオン電池でもあった。しかし、いずれの場合もデジタル化で産業システム全体のアーキテクチャが変容する中で、これらの発明、インベンションが生み出したイノベーションの果実を圧倒的に手にしたのは、発明物たるエレメント部材の大量生産メーカーでなければ、伝統的なテレビメーカーでもない。例えば液晶ディスプレイの発達とリチウムイオン電池の発明を梃子(てこ)に破壊的イノベーションをけん引し、桁外れに大きな成長と収益に結実させた企業は、まぎれもなくアップル社である。新たなアーキテクチャを創造しその覇者となったプレーヤーが美味しいところをほとんど持って行ってしまったのだ。

 仮に日本企業が画期的な車載電池の開発と量産化に成功しても、それが電池メーカーに大きな報酬をもたらすか、その電池を搭載した自動車メーカーの持続的成長に貢献するか。それはその時点における自動車産業もといモビリティービジネスまわりの産業アーキテクチャ次第なのである。ひょっとしたらそこにまたアップル社が君臨している可能性がある。彼らはアーキテクチャ転換ゲームの達人であるとともに、年間4兆円を超える潤沢なフリーキャッシュフロー(自由に使える余剰資金)を事業収益から毎年叩き出す力を持っているのだから。

 『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』西山 圭太氏(著),冨山和彦氏(解説)の  あとがきより

申し上げたいことをご理解いただけたでしょうか?

「今後も脱炭素化の流れは加速していく。そうすると、原子力、蓄電池、送電線網整備が重要になってくる」というのは正しくても「これらの恩恵を受ける銘柄はどこか」を簡単に予想するのは難しいということです。

すくなくとも、蓄電池を手掛けるメーカーや電線メーカー、電機設備関連企業のような「超単純」な解ではないはずです。

Q.電子部品、半導体株はホールドでよいでしょうか

れおん2様からのご質問

電子部品、半導体株を所有しています。

昨年の利益をすべてなくした状況ですがこのままの保有を考えていますがそれでいいでしょうか?

回答

昨年の利益をすべてなくした状況というのは、残念ですが終わったことで、もうどうしようもありません。

重要なのはこの先の見通しで、世界経済の成長をけん引するのはテクノロジーであり、それを支えるのが電子部品、半導体であることは変わりません。

これらのセクターはポートフォリオのコアの位置づけでよいと思います。

Q.業績が毎年良いのに配当がない銘柄は買いでしょうか?

たろう様からのご質問

業績が毎年良いのに長年先行投資ばかりで利益・配当がない銘柄は買いなのでしょうか?

回答

「業績が毎年良いのに長年先行投資ばかりで利益・配当がない銘柄」とは「業績が毎年良いのに配当がない銘柄」ということでしょうか?利益がないのに業績が良いとは言わないでしょうから。

もし、そういうことであれば、それは買いですね。企業のライフサイクルで言えば、成長企業は配当などの株主還元を後回しにして成長のための投資を優先するのが普通です。アマゾン(AMZN)がそうですし、かつてのアップル(AAPL)などもそうでした。

Q.米国株が暴落時期にきているという情報がありますが…

さいたさいた様からのご質問

米国株の市場では、ヒンデンブルグオーメンが点灯していて、暴落時期にきているという情報があります。

今回の日米の値下がりは、どの程度継続するでしょうか?

回答

「ヒンデンブルグオーメンが点灯」とは、いったい何を意味するのかわかりかねますが、なにか、おどろおどろしい感じがします。人間はそのようなインプットを受けると感情的に不安になり、冷静な判断がしにくくなるものです。

ですから、これはあくまで僕個人の主義ですが、そのような余計な情報はできるだけ耳に入れないようにしています。

僕の解釈としては上の回答で述べた通り、現在の米国株は金利上昇に対するバリュエーション調整をしている過程にあります。その調整が済むにはもうしばらくかかるという見立てです。


このコーナーでは、毎週月曜夜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問にチーフ・ストラテジストの広木隆が回答いたします。

今回は2022年4月25日のセミナーで寄せられたご質問から抜粋して回答しています。

回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

 

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