FPという立場では、個々のお客様と向かい合うのではない限り、不特定多数の方向けの一般論をお話することになります。
投資や運用の一般論となれば、いかに効率よく「お金を増やす」ことができるのか、失敗を少なくするためにはどうすればよいのか・・・という点で教科書的にはなりますが、「分散投資(ポートフォリオ理論)」「長期運用」「リバランス」「リスクコントロール」などをご紹介することになります。

もちろん、上記は理論としては正しく、基本としてとても重要であることは間違いないのですが、長い時間をかけて資産育成していくことを前提としたものです。ですが、全ての人が10-20年以上のスパンで資産育成を考えていらっしゃるわけではないですよね。

もっと短いスパンでお金をより多く増やしたい、将来お金が増えることより今使えるお金を増やしたい等々、目的はそれぞれでしょう。
となると、昨今の市場状況を見ると、短期的には過去20-30年における市場分析をそのまま当てはめることは難しいかもしれません。

現在60歳以上の方となれば、20-30年後にお金が増えているための「効率」よりも、日々自由に使えるお金が増えることにより興味を持つ方も多いことでしょう。

先日70代の方とお話をしていて、複利効果のある無分配型のファンドを保有しているが、市場環境の悪化で基準価額も下がっているし何のメリットも感じないとおっしゃっていました。そして、株主優待のある株式を保有している知人のことをとてもうらやましがっているのを聞いて、あらためて金融商品の選択方法について考えさせられました。

株式の株主優待は日本独特の優れた株主へのサービスです。
ただ個人的には、株式投資ではその企業の成長性等株価上昇を期待できる株式を選択、購入するのが本筋であり、株主優待は「おまけ」であると考えるべきだと思っていました。

株主優待は約束された制度ではなく、あくまでサービスなので、企業業績が悪化すれば出なくなることもありますし、そもそもの株式が大幅下落の上、上場廃止などになってしまえば元も子もありません。

でも、もし比較的安定した株価を維持し、将来的にも破たんするような企業ではなく、かつ生活に直結する株主優待(日用品や食品、食事券など)をずっと提供しているような企業であれば、たとえ株価が上昇していかなくともシニアの方が保有する魅力は十分ありますよね。

同様に、配当を出し続けている企業の株式保有、毎月分配のある投資信託の保有など前述した投資理論とは少々異なるものの、投資家の事情によっては直近での楽しみを優先する投資も選択すべきと言えそうですね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー