四季報読破まもなく100冊
皆さん、こんにちは。複眼経済塾の渡部清二と申します。
私は『会社四季報』(以下、四季報)を1ページ目から最後の約2,000ページまで全て読み尽くす完全読破を1997年12月から続けていて、2022年2集春号で四季報読破は25年目、98冊となりました。四季報読破ははっきり言うと非常に大変な作業ですが、苦労したからこそ四季報の本当の魅力を理解できたといえますし、そこまでやって到達した答えは、「四季報はうまく活用すれば宝の山、しかし活用できなければ宝の持ち腐れ」ということでした。
そこで皆さんに四季報の魅力を少しでもご理解いただけるよう、これから3回にわたり四季報の魅力とポイントをお伝えしていきたいと思います。
四季報とは
まずはそもそも四季報とは何かですが、四季報は、上場企業に関する詳細な情報がまとまった約2,000ページの情報誌で、「四季」という文字があるように、新春号(12月)、春号(3月)、夏号(6月)、秋号(9月)の年に4回発行される冊子です。
(画像はワイド版の冊子です)
四季報の3つの強み
四季報の強みについては以下の3つが挙げられます。
1.継続性
四季報は85年以上の長い歴史を持っていることで、その創刊は1936(昭和11)年までさかのぼります。そこから戦前、戦中の混沌とした時期や、戦後の高度経済成長期、ニューヨークのブラックマンデー、バブル経済、リーマンショック、そして直近のコロナショックなど、激動の流れの中で株式市場と向き合い、企業情報を発信し続けてきました。今や日本最大企業となったトヨタ自動車も、中小型成長株の時期があったのですが、そのような歴史も、古い四季報から知ることが出来るのは四季報の継続性ゆえです。
このように長期にわたって企業情報を発信し続けている情報誌は、世界広しといえども四季報以外ありません。
2.網羅性
2点目の「網羅性」とは、日本の株式市場に上場しているすべての企業を1冊の冊子にまとめていることで、世界にはたくさんの株式市場がありますが、このような冊子は世界で唯一四季報しか存在しません。
レストランで料理を注文する際、またお店で商品を買う際に、メニューやカタログを見て、何にするかを決めますが、日本株を買う際にどの銘柄にするかをどのようにして決めるのでしょうか?そこで日本株のメニューやカタログとなるのが四季報というわけですが、四季報はかなり細かな情報まで掲載していますので、レストランでいえば、提供されるすべての料理の、原材料や作り方まで書かれた詳細なメニューみたいなものになるということです。
そんなメニューがあれば自分好みの銘柄を見つける事ができますね。
3.先見性
3点目の「先見性」は2つのポイントがあります。
1つ目は、3ヶ月に1度の四半期決算がなかった80年以上も前から年4回の発行にしたことです。年4回の発行にした理由は、1937年創刊号の巻頭ページに、「株式会社を見る場合には、日々刻々の息吹を知る必要がある」と書かれているように、企業は生きものであり常に変化するという先取りの発想があったのです。
2つ目は、すべての銘柄について来期の業績予想がついていることです。証券会社のアナリストが業績予想を出している銘柄はいくつかありますが、全ての上場企業の来期予想を掲載しているのは四季報だけです。来期予想は、銘柄を選ぶ際の非常に重要なヒントになることは間違いありません。
どっちが使える?紙ベースとオンライン
ところで会社四季報には、紙ベースの冊子である「会社四季報(=以後冊子とする)」と、web上のサービスである「会社四季報オンライン(=以降オンラインとする)」の2つがあります。どちらを使うのがよいかというご質問をよく聞かれるのですが、私はいつも「どちらもうまく活用した方が良い」と、ハイブリッドの活用をおすすめしています。
冊子はパラパラめくることで、自分が知らなかった銘柄に出会うことがあり、コメントの文脈をつなげることでそれまで気づかなかったテーマを見つけることもありますが、反面、例えば「営業増益率30%以上」という定量的な数字の条件で銘柄を選びだすことはできません。
しかし、オンラインは、有料サービスにはなりますが「スクリーニング」という機能があり、その機能を使えば一瞬で「営業増益率30%以上」の銘柄を選びだすことができます。また「検索」機能を使えば、気になるキーワードを入力することでそのワードがヒットする銘柄を抽出することもできますので、気になるテーマの関連銘柄を簡単に見つける事ができます。
このようにどちらにも良い面がありますので、ハイブリッド活用が最強だと考えています。
なお、有料のオンライン情報をいきなり申し込むのはハードルが高いと感じた方は、インターネット証券のサイト等で四季報情報を無料で見ることが可能です。四季報の情報を利用してスクリーニング機能なども各社それぞれ提供していますのでこうしたツールで使い勝手を試してみるのもよいでしょう。
次回から紙ベースとオンライン、それぞれの具体的な活用法をご紹介していきます。