企業別の記事構成は14ブロックに分類される
2回目のコラムでは、紙ベースの冊子である『会社四季報』(以下、四季報)の記事の構成についてご説明いたします。四季報に掲載される企業の情報は以下の図のようにAからNまで14のブロックに分けられています。
細かくブロック分けされているその姿は、ご飯やおかず、漬物などがきれいに区分けされて盛り付けられた「幕の内弁当」のような感じですが、逆にぎっしり詰まりすぎていて、見ただけでおなか一杯になってしまうという方もたくさんいると思います。一方で、トヨタ自動車(7203)から上場したばかりの企業まで、全て同じフォーマットで統一されているのが特長で、そのため、どのブロックに何が書いてあるのかをしっかり理解できれば、そこまで難しいものではないのも事実です。
そこでまずは「A、B、E、J、N」の5つのブロック(赤枠部分)に注目しましょう。私はこの5つを「アベ(ABE)ジャパン(JN)」と呼んでいますが、この5つを理解するだけで、その企業の大体の姿がわかってきます。
5つのブロックを読むだけで企業の姿が見えてくる
Aブロック:企業の自己紹介
Aブロックは、「私は○○番の○○と申します。○○をやっています」のような企業の自己紹介で、証券コード、社名、設立、特色などが書かれています。
特に重要なのが【特色】欄で、その企業がどのような事業を行っているかが書かれています。そのコメント中に「世界首位」「国内首位」などと書かれている企業は要注目で、それはその分野で優位性をもっているということでもありますので優良企業の可能性があります。
Bブロック:コメント
Bブロックは、四季報編集部による独自取材のコメントが書かれています。
コメント欄に2つの【カッコ】があり、これを「見出し」と言いますが、1つ目は原則今期業績という「短期見通し」について、2つ目は中長期のトピックという「長期見通し」が書かれています。当然、「絶好調」「最高益」「続伸」「飛躍」などポジティブな「見出し」の銘柄に注目するのも良いのですが、私は2つ目の長期見通しの「見出し」に会社の大きな変化を感じるものを重視しています。
Eブロック:貸借対照表(バランスシート=BS)、キャッシュフロー(CF)
Eブロックは、企業の規模、健全性、継続性を見るブロックです。
【財務】欄はBSの重要な数字が抜粋されたものです。BSは簡単に言えばその企業が持っている「全財産の目録」みたいなもので企業の「規模」がわかりますが、同時にその企業がどこからどうやってお金を調達し、そのお金をどのように運用しているかもわかります。またBSの「自己資本比率」をみることで「健全性」がわかります。
【キャッシュフロー】欄は、お金の出入りだけに着目した企業の「お金のやりくり」を表していますが、個人でもお金のやりくりに行き詰ると破産してしまうように、CFからその企業の「継続性」がわかります。
Jブロック:損益計算書(PL)
Jブロックは、「これだけ売上を上げて、これだけ利益が出た」というような企業の成績が書かれています。
【業績】欄は、縦に上から過去の決算、今期予想、来期予想の業績が時系列に書かれ、横に左から売上高、経常利益、純利益と決算の項目が並んでいます。前回のコラム(リンク貼)でも書きましたが、今期、来期の予想は全て四季報独自のもので、全上場会社の来期予想が掲載されているのは世界で唯一四季報だけです。ここでは売上高の伸び率から「成長性」がわかり、売上高と営業利益から「優良性」がわかります。
Nブロック:株価チャートと株式指標
Nブロックは、株価チャートや株式指標などが書かれていますが、その企業の市場での評価がわかると同時に、株価が割高か割安かを判断する材料になります。
まとめ
このように、5つのブロックを読むだけで企業の大体の姿が見えてきますが、だからといって、それ以外のブロックを読まなくてよいということではありません。
2019年10月10日日本経済新聞の朝刊文化面に「シウマイ弁当 攻略の極意」という見出しで、崎陽軒の「シウマイ弁当」をいかにおいしく食べるかを追求しているという記事がありました。その中で22ブロックに分けたシウマイ弁当をどこから食べるかをアンケートしたところ、ご飯でもなくシウマイでもなく「筍煮」だったというオチがありましたが、四季報も同様に、上記5つのブロックが理解できたら、自分なりにこだわりのブロックを見つけるというのも四季報の楽しみ方の1つだと思います。