暑さと寝不足で、夏バテを感じている方も多いかもしれません。
オリンピックは純粋にスポーツの祭典として感動を与えてくれると同時にその経済効果も注目されます。
英ロイズ銀行グループの直近の発表によると、ロンドン五輪招致が決定した2005年から終了5年後の2017年までの12年間の経済効果として、165億ポンド(1ポンド=124円計算で2兆460億円 )および6万2200人の雇用創成としています。
雇用、観光、建設事業などの増加よる経済波及を見込むと同時に、大衆心理の高揚から来る個人消費等、少々楽観的な前提による巨額な数字のようです。
確かに人間の経済行動は合理性以上に「気持ち」に左右されることは行動経済学でも知られていますから、お祭りイベントに対する大衆心理の盛り上がりが経済にプラスの影響を与えると言えます。
経済が停滞するとカンフル剤のごとく即イベントを・・・という動きになりがちです。東京五輪招致運動もそうですね。
ですがこうしたイベントは、ゼロから巨額の経済効果が生み出されるものではなく、先行して巨額の初期投資が必要です。
スケジュールが先にありきですから、その時点での経済状況に関係なく、お金を落としていかなければならず、巨額な債務を抱えることになり、その影響は後々にまで尾を引きます。
その国の経済状況(新興国なのか、先進国なのか、政府債務状況はどうか...等)によって、必ずしもプラス効果ばかりとは限りません。
事実、過去の五輪開催都市でもその後経済停滞に見舞われているケースも多く、前述の調査結果のような楽観的な見方には少々不安も感じます。
日本では東京五輪後に高インフレ⇒バブル⇒バブル崩壊⇒失われた20年と現在に至ります。
アテネ五輪後、ギリシャでは建設投資過剰が政府債務を膨らませ、ご存じユーロ危機の引き金となりました。
北京五輪のすぐ後にリーマンショックが起こったため、世界的経済停滞(中国経済も失速)となりました。五輪開催そのものは中国に大きな経済波及効果を与えたのも事実ですが、不動産バブルももたらしています。
ただ、中国の場合、新興国であること、政治体制が他先進国とは異なること(市場がオープンではないこと)などから完全な比較は難しいかもしれませんね。
2016年のリオ五輪に向けてブラジル投資も既に盛り上がりつつあります。長期的な投資を考えるのであれば、単純な五輪の経済効果期待だけではなくマクロ的な経済、政治事情等についても考慮していきたいものですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー