景気減速、株安、円高・・・とさまざまな「低下」「下落」が目につきました。
円高という言葉は「円の上昇」ですから言葉の上では「低下」ではありませんが、ドルやユーロなどが対円での通貨安=為替レートの下落を意味し、同時に輸出国である日本経済にとって、円高は株安につながるネガティブな状況です。
そんな中、集中的に投資されているときに「急低下」という見出しで報道される商品があります。それが国債です。
通常は上述の通り、市場で「低下」と言えば、売られて「価格」が安くなっている状況ですが、債券の場合は資金が流入し買われているときに「金利(利回り)が低下」という表現が使われます。
ここが債券のわかりにくさの一つなのですが、株式、為替、金、投信等その他の金融商品と異なり、相場状況を価格ではなく利回り水準で表現するためです。
もちろん債券にも価格はあります。
通常の債券は、例えば発行時に価格が100の場合、償還時に100の価格で戻ってきて、年に●%といった決まったクーポン(利息)を受け取れる固定金利商品です。
債券は発行~償還の間に債券市場で売買できる商品ですが、その際は市場状況に応じて価格が変動します。
例えば100で発行、利率(クーポン)2%、満期2年の債券が1年後に101の価格になっていたとします。その債券を101で買った場合(パーを100とし、オーバーパーと呼びます)、償還時(翌年)まで保有すると2%のクーポンは得られるものの、元本価格で1%のマイナスですから合計の利益は1%となりますね。これが利回りです。
他の金融商品のように価格だけで見ることができると分かりやすいのですが、クーポンがあるために価格だけでは利益率を計れません。
債券は価格でも利率(クーポン)でもなく、合計の利回りでその利益率を考えるべき金融商品なのです。
債券市場で指標となる国債(もっとも流通量が多い)は、10年といった長期間のものでその利回りである「長期金利」は経済の動向を見る上で重要な役割を果たします。
利回りが低下しているということは価格が上昇している、つまり債券が買われていることを示しますが、債券が買われるということは景気に対し市場に不安感があって、株式などリスク資産から資金が回避しているときが一般的です。
「債券が買われている」ときは市場での景気先行き不安などネガティブな状況を意味することになるため、債券トレーダーは悲観的なタイプの人が多いとも言われる所以なのかもしれませんね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー