ギリシャのユーロ離脱の可能性が注目を集めています。
英国の大手印刷会社が旧通貨であるドラクマ紙幣の印刷準備を始めたというニュースは現実味を増したことを印象づけていますね。
週末に行われたG8ではギリシャに対してユーロからの離脱を留まるよう促しています。

ギリシャがユーロを離脱するという方法は現実的ではない、と以前は考えていました。
ユーロは各国の歴史ある通貨を消滅させてまでして実現した単一通貨です。統一するまでに掛けた時間と労力、コストを考えると、離脱と一言で言っても膨大かつ複雑な作業とコストが必要です。

また、これまでに大量に発行している「ユーロ建て」債券の存在を考えれば、ユーロから一国でも離脱すること、しかもそれを勢いで行ったとき、その国の「新」通貨の急激な下落に伴う債務の巨大化、金融システム麻痺の懸念、(債務不履行による)大量の倒産、失業を含む市民生活・社会の混乱、他の国の追随離脱の懸念と信用不安の増大等、市場に与える影響は計りしれません

ですが、緊縮政策を国民が拒否し、その上でユーロ離脱もしないとなれば、これまでのような債券の償還時毎の救済措置に頼り続けるだけでは根本解決は望めないのも現実ですよね。

本来、デフォルトを起こすような財務状況の国の場合、通貨の大幅な切り下げと利上げという通貨政策と金利政策の二本立てが必要なのに、ユーロという縛りがあるためにそれが行えない状況にあったわけです。

世界経済にとっては、言い方は悪いですがギリシャをユーロから「切り捨てる」荒療治の方が、ずるずると支援をし続けなければならない現状を維持するより回復は早まるのかもしれません。

ただギリシャ自身がそうした荒療治を2001~2年のアルゼンチン危機時のアルゼンチンのように乗り切れるかは、単純には比較できません。しばらくは今以上の混迷と混乱が「強烈に」引き起こることとなるのではないでしょうか。

現在、勢いを持ちつつある新興諸国にもこの信用不安の悪影響が広がっており、荒療治が行われたとしても、しばらくはダメージが大きくあると思います。

今後の投資を考える上では、ギリシャのユーロ離脱の有無、それぞれのケースで投資シナリオを作って対応していく必要はありそうです。
その時の市場のムードに流されてしまうとヤケドをしやすい状況と言えます。また、市場は事前に「織り込み」を始めます。物事が決定してから動くと市場の後追いになってしまいますので、くれぐれもその点はご注意くださいね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー