誤解してはいけないのは、金融機関は顧客には利益を上げて欲しいと考えているということ。顧客に気持ちよく取引を続けてもらうことこそ利益につながるからです。
顧客を損させることで金融機関が儲けていると考えるのは間違いです。

それでも購入した金融商品で損失を被った経験は誰でもありますよね。
これはもちろん金融機関が意図して陥れたのではなく、相場変動の結果です。
株式でも為替でも相場の先を全てお見通しなどという人はいません。著名な相場師と言われる人でも全てが全戦全勝の億万長者ではないことがその証拠です。
相場変動には様々な要因があり、それこそ予測不可能なことの方が多いくらいです。トレーダーでもファンドマネージャーでも、都度分析や経験に基づいて最良の選択(投資)をしていても、「負け」は経験するものです。

投資は自己責任と言います。
「この商品を勧められたせいで損をした...!」
という考えはけっしてしないように、自分自身で投資対象のリスクと期待リターンをきちんと把握するようにしたいですね。

なぜこんな「基本的な心構え」をあらためて書いたのかと言いますと、最近何人かの人から上のような言葉を聞いたからなのです。特にファンドや仕組債券などで損失が出ている人がこうした発言をしてしまうようです。
自分自身で銘柄選択した株式投資などと異なり、投資したものの中身を十分に理解していないせいなのかもしれませんね。

ファンドにしても仕組債にしても、個人投資家一人ではできないような投資方法を行うことで、利益をあげようとしているものが多いです。
規制の厳しい国、地域への投資、為替変動を抑えるためのヘッジ、利回りを上げるためのデリバティブの活用・・・などなど。
前述したとおり、運用をしているファンドマネージャーも、債券の仕組を組成した人も、決して先読みができる万能者なのではなく、その時点での相場や環境に基づいて投資決定、価格設定等の判断をします。

例えば、魅力的な利率が提示される仕組債券は、市場金利をベースに、オプションの売却(プレミアム収入が上乗せとなる半面、損失が膨らむリスクをもつ)などによって金利を上乗せしていきます。
条件が重なるほど、市場でのプレミアム料が高くなり、すなわち上乗せ金利が上がる仕組みになっています。「早期償還条項」「ノックイン条項」などがそれに当たります。

こうした商品は、魅力的な利率だけを見て購入するのではなく、リスクがどこにあるのか、そのリスクを自身がどう判断するのか(上記例では早期償還する可能性があるのか、ノックインする可能性をどう見るのか)がポイントです。

デリバティブの仕組みを完全に理解しろというのではありません。
リスクに対する理解と許容、自身で相場に対する予想をもち、納得した上で商品を購入すること、それが自己責任というものですよね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー