この週末に、いくつかの大きな出来事がありました。ロシアに対する金融制裁です。経済制裁ではありません。金融という狭い分野での、しかしその性格上速くて、そして今回は深い制裁です。

ひとつはSWIFT(スイフト)に於けるロシアのいくつかの銀行との決済を止めること。SWIFTとは、いわば国際的な手形交換所みたいな所で、例えばロシアからイタリアに天然ガスが売られたら、イタリアはその購入代金(通常はドル)をコルレス銀行と呼ばれるイタリアの元締め銀行を通してSWIFTに持ち込み、代金を受け取るべきロシアの銀行は彼らのコルレス銀行を通してこの代金をSWIFTを通じで受け取る。SWIFTに於けるイタリアのコルレス銀行のドル残高を下げて、ロシアのコルレス銀行のドル残高を上げる、これを「決済」という訳ですが、これが止められることになりました。要はロシアと外国の間で貿易をした時に、お金の決済が出来なくなるのです。これはSWIFTでロシアの銀行の決済停止すれば一瞬で完結する。どんな経済政策よりも速くて深いと云えるでしょう。

もうひとつはロシアの中央銀行の外貨準備(これはドルをFRBに、ユーロをECBに預けている訳ですが)に対するアクセスを制限すること。これはルーブルが売られ過ぎて対ドルでルーブル介入をしようとしても、ドルが動かせないので無力になります。これらの措置は、ロシア国内での物不足とルーブルの下落を促しますが、このような手段は、今までになんども軍事的緊張があってもやらなかったことなので、新機軸です。現代に於ける戦争とはこういうことなのかも知れません。

ロシアはGDPの世界に占めるシェアは 1.7% 程度ですが、これらの措置でロシアのドル建てで見た経済規模は随分小さくなって、今の時点では既に 1% を切っているのではないでしょうか。こうしてロシアを十分に小さくすることがアメリカの狙いかも知れません。翻って考えるに、金融とは国家にとって大変重大な安全保障だということです。

日本はもっともっと経済を強くして、大きくして、世界から見て放っておけないだけの大きさを維持すべきで、かつ金融と資本市場を大きくして、強靱にして、国の大きな安全保障とならなければいけないと、そう染み染み思うのでした。