中国株は本土市場も香港市場も調整が続いています。一番大きな原因として報道されているのは欧州問題に対する懸念です。しかし、中国本土ではプラスのニュースも出てきています。温家宝首相が成長重視の方針を打ち出し、中国は断固たる政策決定を通じて経済の急減速を回避するべきだと述べたのです。そして5月23日には国務院(日本の国会に相当)常務会議を招集し、今後の業務方針などの指示を行っています。
この中で、経済成長を一層重視するための具体的な政策として恒久減税などの税制構造改革や、太陽エネルギーなど新エネルギーの普及促進、省エネ製品などの消費刺激策、経済全体に波及効果の大きい大型インフラ計画の推進加速などあげられました。中国はアクセルを踏む時もブレーキを踏むときも一気に踏み込むことが出来ます。今回このような発表があったことで、関連産業は潤う可能性が高まってきています。
第12次五カ年計画に基づいて、オイルパイプラインに関する5年間の国家計画が2011年3月に出ています。具体的には、中国のパイプラインの総距離を2010年末の7万7000キロから2015年には15万キロまで伸ばすことが正式に決まっています。ちなみに15万キロを達成するためには、年間350万トンのオイルパイプが必要になります。もちろん、この15万キロ以外に各地方政府のオイルパイプ敷設計画も大量にあります。
ともあれ、今回の決定によって急激に推し進められる筈で、数ヶ月後には国家プロジェクト級のオイルパイプメーカーが大型受注を獲得したというようなニュースが出てくるのではないかと思います。その他でも、省エネ・環境産業の振興については第12次五カ年計画で3兆4000億元の投入が見込まれており(第11次五カ年計画の2倍以上)、また、廃棄物のエネルギー化への利用割合を2010年の20%から2015年には35%まで高め、1日の処理容量を2010年の9万トンから2015年には30万7000トンに引き上げる計画です。こちらも今回の決定で急激に推し進められていますので、担当する企業の2012年の獲得プロジェクト数はかなりの規模になるのではないかと思います。
ところで2012年は中国の国家主席が替わるタイミングでしたが、2011年は中国地方政府の改選の年であり、一部のプロジェクトの審査が放置されていたため、インフラプロジェクト関連企業にとっては重しになっていました。
しかし、2012年は地方政府の改選が完了し、秋に国家主席が替わって新体制になれば、一連のインフラプロジェクトを加速しやすい体制になってきます。現在は欧州問題、中国経済のスローダウンでこれらのインフラプロジェクトから高い可能性で恩恵を受けられる企業の株価も大いに下がり、PER10倍以下の銘柄がゴロゴロしています。秋以降の新政権では景気浮揚対策としてこれらのインフラプロジェクトが力強く推し進められる可能性が高く、業績とは関係なくこれらの銘柄の株価が下がっている今は購入のチャンスなのではないかと思います。