先週のこのコラムで書いた通り、ドル/円の最安値は次々と更新されています。
今週はFOMC、G20首脳会議、そして金曜日には米国の経済指標の中でも最も重要なものの一つである雇用統計と大きなイベントが続きます。
市場は様子見をしながらも、細かな乱高下は多そうですね。

前回の米雇用統計(9月)は予想外に結果が良く、先週発表になった7-9月期のGDPでは個人消費に改善が見られており、今週の数字には期待感があります。ただ、市場のそもそものセンチメントはそれほど楽観的なものとは言えず、QE3に対する警戒感は引き続きあります。

雇用統計の数字が予想を大きく下回るようなネガティブ・サプライズがあれば、大きなドル売りにつながる可能性も大きいと言えますね。

今週は米国に注目が集まることが多そうですが、欧州はと言えば、先週のEU首脳会議およびユーロ圏首脳会合で包括案に一応の合意を得たことで、市場においてのユーロの下落は一服し、ショートの巻き返しが見えています。

先週金曜日以降、下記のような報道を多く目にされたことと思います。

「ギリシャ支援などの包括策が合意、ユーロ買いに安心感」

「欧州債務危機への懸念が和らいだ」

「リスク選好ムードが広がっている」

今週も前述の通り、重要イベントが目白押しで、米ドルに対しても上記と同様もしくは反対の報道がされることでしょう。

あらためて言うまでもないことだとは思いますが、これらの報道を見るときの注意点を確認しておきますね。
ご自身の投資スパンと報道のタイムスパンを切り離して見ること、です。
市場関連の報道はほとんど東京時間、ロンドン時間、NY時間のおおまかな時間帯においての相場の動きの背景についてです。つまりチャートで言えば時間足、細かくても30分足くらいの動きの中から大きな動きをかいつまんで解説しているものということですね。
前述の例で言えば、「包括案合意」という大きなイベントに対してNY時間が終わるまでの大きな動きを捉えたものです。

今回の包括案合意によって、本当に欧州債務危機の懸念がなくなったのか、と言えば否でしょう。(もちろん当座のしのぎにはなりますが、根本的な解決ではありません)
今後ユーロを本当に安心して買えるのか、リスク選好につき進めるのか、と問われてYESと強気に言いきれる市場参加者は多いとは言えないでしょう。

ご自身の投資スタイルがどの時間帯をメインに、どの程度のタイムスパンで行っているのかによって、イベントの結果の捉え方、今後の予想も異なってくるはずです。こうした報道をそのまま受け取って自身の動きを決めてしまうと、単に報道に振り回され、つまり相場の後追いをする結果となり、失敗してしまうリスクが高まってしまいます。

情報を多く集めることは投資をしていく上で大変重要なものですが、報道そのものの背景を理解し、自分自身の投資スパンに置き換えて判断をしていくことが必要ですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー