先週ドル/円は再び最安値(1ドル=75.78円)を更新しました。
ここ最近の値動きや欧米の経済環境・市場を見れば、けっしてサプライズではなかったと言えます。

多くの方がこの(現時点の)最安値が歴史的な底値になるとは思っていないでしょう。今後一本調子に円高になるとは思わなくとも、あくまでこの最安値は通過点に過ぎず、まだしばらく下降トレンドは続くと予想している方のほうが多いのではないでしょうか。もちろん介入警戒等ありますし、下値を探る勢いがつくとは考えにくいと思いますが・・・

今回の最安値更新は、投機的な動きにストップ注文が巻き込まれた結果のようですが、いずれにせよ、今、市場ではドル、ユーロを積極的に買い進めようという流れは見えてこないということもあり、結果として、消去法的に日本円が買われたと考えられます。

今、欧米経済のキーワードとして、「財政」が挙げられますね。

米国の財政赤字問題は深刻な状況(議会は与野党対立)で、米郵政公社も破たんの危機⇒政府支援の必要があると言われます。また、鈍化した景気への刺激のためのQE3(追加緩和)の可能性も高まっています。

ただ、ここのところ市場では、ドルそのものが要因というより、ユーロの動きに依存した動きをすることが多いようですね。

ユーロ圏ではギリシャ問題は日に日に深刻になってきていています。
今週ユーロ圏首脳会議が開催されますが、ギリシャの債務削減の詰めの協議は行われても、ユーロが抱える問題の抜本的な解決策とはならないでしょう。l

ユーロの抱える問題・・・それは複数の国間の単一通貨・統一金融政策でありながら、財政は個々の国によって行われていることによって調整機能が働かないこと。

そもそもはインフレ率、政府財政赤字等の厳しい基準をクリアした国のみユーロ加盟ができることになっていたので、ユーロ圏内に調整不能に陥るような財政のひずみができるはずもなかったのですね。

いざひずみが明白になったとき、為替政策、金利政策ともに思い切ったかじ取りという調整が不可能となっていて、支援という形でした手が打てずにいるわけです。
そうした支援は、その時々におけるデフォルト回避にしか過ぎないですし、信用リスクの高まりが金融不安につながるという深刻な状況になっています。

財政状況が基準に達しない国がユーロを離脱できるのなら問題解決できそうですが、それも難しく、かといって財政を統一、もしくは協調するという大ナタを振るうことも難しそうです。

つまり、ユーロ圏の財政問題は残念ながら、まだまだ深刻かつ長期化すると考えられますよね。

また、日本も巨額な財政赤字をもつ「財政」が問題の国です。
確かに経常収支黒字等、国の経済背景は欧米とは異なっているのも事実ではありますが、日本の財政赤字そのものは市場の懸念要因とならずに、円は通貨ペアの片割れとして「買われる」立場にあるのですから、違和感もありますね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー