先週末はパリでG20が開催されました。
日米欧に新興国を加えた20カ国という大所帯であり、当然のことながら利害が大きく相反した国々の集まりです。
それだけに今回の共同声明は理想的な形ではあるものの、懸念の認識・共有であり、当たり前といえば当たり前の確認に過ぎず、踏み込んだ結論に至らなかったという印象です。
今後、具体的にはどういった対処をして、どういう方向性をもたせるのか、という点に疑問と不安が残りました。

G7~8といった小規模な会議の時には、ごく一部の先進国が世界経済の行く末を握り、その声明はそのまま市場に、そして世界経済に影響を与えることがありました。それだけに市場関係者は今よりずっとこの会議を重要視していたように思います。

景気回復が遅れているどころか、世界経済の爆弾ともなっている米欧と、そのしわ寄せとしての円高に苦しむ日本、世界経済を牽引しつつありながらも、その失速とインフレに懸念を抱える新興国とでは、そもそものベクトルが異なり過ぎると言えるでしょう。

為替市場の安定化というテーマ一つをとっても、介入をしてでも為替水準をコントロールしたい国と市場主義で介入に否定的な国では、「安定させる方法」は一致しない、つまり当然のことながら、本当に効果を発揮するであろう協調介入に踏み切ることはなさそうです。

最大懸念の欧州債務問題についても、「世界経済に著しい下振れリスク」「金融システム安定にあらゆる行動をとる」と目新しい点をありません。
欧州債務問題はこれまでも、その時々のデフォルト回避のための資金繰りの綱渡りをしてきており、その都度市場では「リスク回避傾向」「リスク懸念が遠のく」の繰り返しによる一喜一憂の値動きに終始しています。

この問題はユーロシステムそのものに関わる根の深い問題だけに、そう簡単に抜本的な解決策は見つからないわけですが、引き続き市場と金融機関に「資金注入」を続ける以外ないということですね。

以前は、世界3大通貨を有する日米欧のどこかの経済がほころんでも、別の体力のある国・経済圏がそれを吸収することができて、世界経済全体のバランスを保ってきていました。
90年代に日本のバブル崩壊後長く景気低迷している間、米国経済は調子よく、その後はユーロ圏への期待もユーロは快調にその価値を高めていきました。

ところが今は日米欧ともに自国内のことでかなりいっぱいいっぱいの状況となっていて、自国に火の粉が降りかかってくるのだけは勘弁してほしいというかなり内向きな姿勢しかとれませんし、期待の新興国はその勢いも先進諸国によるもの(投資マネー)であり、まだ世界経済全体を吸収できるほどの体力とインフラはもっていません。

G20で何かが変わるか・・・といえば、G20は「協力」と「団結」の確認の場であって、残念ながら市場や実体経済にすぐになんらかのプラスの影響を与えることは期待できなさそうですね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー