先週は米国では主要な経済指標の発表が続きましたが、金曜日に最も注目される雇用統計の発表があったため、週間の動きは様子を見据えたものでしたね。

さて、その雇用統計が予想を大きく下回る結果(非農業部門雇用者数が増加数ゼロ)で、市場では景気回復への懸念が広がり、リスク回避色も強まりました。
為替市場では発表直後に米ドルが売られたものの、「米国の指標」が悪かったにもかかわらず、リスク回避指向からユーロや資源国通貨が売られ、相対的に米ドルが上昇するという結果になりました。

「リスク回避」という点で、今回注目したいものがあります。
先週の市場でのサプライズの一つが、ブラジルの政策金利の利下げです。予想外の出来事でしたが、こと為替市場の反応は大きくありませんでした。前述した大きな指標が控えていたこと、そもそもブラジルレアルが規制通貨で流通量もレアル市場も大きくないので、巨大な為替市場全体には影響が限定的であったといえます。
ちなみに金利市場ではすでに利下げを織り込んでいて「予想通り」の反応と言われますが、一般的には「予想外」でしたね。

利下げというのは通常、景気刺激のカンフル剤としてとられる政策です。リーマン・ショックの直後に世界中が利下げしたのはそのためです。

最近のブラジルはBRICsの一角として、世界景気を牽引する新興国、資源国の一つとして注目され、世界中の投資マネーが大量に流れ込んでいます。インフレ率が高騰し、景気過熱対策として利上げを繰り返してきました。
結果として通貨レアルがますます押し上げられる結果となり、通貨高対策(外資規制強化など)についても政府は頭を悩ませているところです。
日本からも投資信託等を通じ、多くの投資マネーがブラジルに向けられていますね。

そのブラジルが予想外の「利下げ」の判断をした理由として以下が挙げられています。

◆ 世界景気の減速がブラジルに波及することに備え、早めの景気下支え
◆ レアル高対策・外資流入に対するけん制

ただ、前述の通り、ブラジルは6%を超えるインフレ状態にあることには違いなく、インフレ対策の部分が抜け落ちた金利政策に偏ってしまうと、インフレのコントロールができなくなるという大きなリスクと背中合わせです。

過去に、ブラジルは「超ハイパーインフレ」とも言うべきインフレに長年苦しめられました。インフレが加速すると、結果、通貨安を招き、またインフレに、という悪循環で、そうなると繰り返し追いかけての利上げも「悪い金利上昇」以外何ものでもなくなってしまうのです。

何のリスクを優先的に回避すべきなのか、中央銀行のかじ取りは大変難しいものですが、現在のような世界経済においては当然一国の問題には収まらないだけに今後も注意して見ていく必要がありますね。

私たち投資家も何のリスクに注目し、回避すべきかを冷静に判断するようにしていきたいものです。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員