いよいよドル円が史上最高値に迫ってきています。ドル相場や米国株のみならず、世界の株式市場や金融市場が下落している、その原因は米国の債務上限引き上げ問題ですね。

欧州ソブリン問題と並び、「米国債務問題」という主語がニュースには踊っていて、今さらその意味は聞けない・・・と言う方もいるかもしれません。「米国の債務上限引き上げ問題」とはそもそもどんなものなのでしょうか。

日本が赤字国債頼みの財政赤字国であることはよく知られていますよね。実は米国はレーガン大統領の時代(80年代)から、「双子の赤字」、つまり財政赤字と貿易赤字を抱え込んだ巨大債務国です。(正確にはクリントン大統領時代に一時期財政収支が黒字化した後、ブッシュ大統領時代に再び赤字化。)

日本の財政赤字はほとんど国内で消化される国債でカバーされ、その背景には巨額の国民の預貯金があること、巨額の貿易黒字⇒経常黒字国であることなどから為替市場では「日本売り」になるどころか、同じく経常黒字国のスイスと並び、ドルやユーロを売るための、その対価として買われています。

米国も、赤字=借金を国債発行によって補っています。
ちなみに米国国債は債券の市場の中で、もっとも流動性が高く、信用性の高い債券として流通し、世界中の国(市場)で取引・保有されています。

米国の債務上限というのは、「米国政府の負うことができる債務残高の上限」のことで、元利金の支払いを米国が保証する債務(国債)の額面の上限です。本来税収(歳入)が増えれば借金に頼らなくても済むはずですが、リーマン・ショックによる金融危機以降、歳入増加どころか大きく落ち込んでしまい、借金返済のための借金をしないと政府の財政は回らないところにあります。その上限金額は予算手続きによって変更できるもので、これまでも引き上げ続けられてきたのですが、現在の米国は日本同様の「ねじれ議会」となっており、「引き上げ法案」は下院で可決されたのですが、上院で否決されてしまいました。
8月2日までに上下院議会で可決、赤字国債発行(=借金)ができないと既存国債の元利償還ができない、つまり債務不履行(デフォルト)となる可能性が高いのです。

それにしても、トリプルAの代名詞である米国債がデフォルトの恐れ?!と過去において想像しえない、世界経済の屋台骨を揺るがす状況です。市場においては、本当にデフォルトさせるわけがない、どうにか合意する、という見方が底辺にあり、もちろん米議会でも妥協案を挟んで、折り合いをつけようとしています。

ところで、そもそもデフォルトの可能性が高まっている債券のソブリン格付けが格下げ予告はあるものの現時点でトリプルAを保っているというのも不思議なものです。やはりメジャーな格付け会社が米国の会社だからでしょうか。ソブリン格付けそのものの信用が不安になりそうですね。

(※)日本時間8月1日午前、オバマ大統領より合意に至った旨発表があり、デフォルトは回避される見通しとなりました。市場も急速に反転しています。(本コラムは発表前の時間帯に執筆いたしました。)

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー