例えば、輸入企業が将来支払う予定のドル建て金額を確定したり、輸出企業が将来受け取る予定のユーロ建て代金の金額を確定するために先物為替予約をします。前者であれば先物のドル買い円売りで、後者では先物のユーロ売り円買いです。
この取引で将来の為替レートを固定することで下記のようなメリットがあります。
◆為替差損の回避(為替リスクのヘッジ)
◆将来のキャッシュフローの確定
金融先物取引所の「先物取引」の定型化された取引とは別のモノで、金額、期日等自由に設定できる相対取引です。現物取引であるスポット取引に対してフォワード取引とも呼びます。
個人投資家にとって、FX投資は大変身近なものになりましたが、FX投資は現物取引を原型にしているため、先物為替取引にはあまり馴染みがないことでしょう。でも、基本的な考え方はFX取引を知っていれば分かりやすいと思います。FX取引において、決算を日々先送りする、つまりポジションを持ち続けるためにはスワップポイントの受払いをします。先物為替取引では、現物取引を約定した時点で、決済日にあわせて何日、何週間、何カ月分のスワップポイントを現物レートに差し引きして先渡しする先物為替レートを作ります。
この取引は実は証券投資の場面でもよく使われます。外国株式などに投資する投資信託に「為替ヘッジ付」という種類があるのをよくご覧になると思いなすが、為替変動のリスクを回避するためのヘッジ方法の一つがこの先物為替予約です。
この取引は、原則的には金利市場が十分に発達した米ドルやユーロといった通貨市場においては非常に活発です。ただ現物取引そのものや資本流出に規制があるような新興国では、先物為替の市場が未成熟であったり規制があったりする場合が多いものです。そうした国で現地通貨建て投資をしている場合は為替リスクを回避する手段としてNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)という先物為替予約が利用されています。中国人民元やブラジル・レアルなどの規制通貨でもこのNDFが活発に取引されています。
基本的には想定金利差を用いて計算値による先物市場でNDFレートが決定します。通常の先物為替予約との最大の違いは現地通貨の決済ができないため、元本の受け渡しはせずに決済日にNDFレートと現物レートの差額決済を行うことです。それにより通常の先物為替予約と同様の効果を得ることができるのです。
差額決済という方法はFX投資で用いられているので、個人投資家にとってはこのあたりはすんなりと理解できるかもしれませんね。直接的には取引を行うことが難しい、こうした先物の為替取引も実は身近な投資商品の中に組み込まれていることが多いので、ぜひ気をつけて見てくださいね。
廣澤 知子ファイナンシャル・プランナー