ギリシャの単一通貨・単一金融政策をとるユーロ圏からの離脱という説は以前からありましたが、ここにきてドイツ誌の報道により再燃、ただし即座に当局に否定されました。
ギリシャの通貨をドラクマに戻す・・・?にわかには考えにくい「ユーロ離脱説」ですが、市場では相応の反応をもって受け止められたということは、それなりの信ぴょう性もあるということでしょう。
いくつか背景を見て行きましょう。
まず、メリットとその可能性についてです。
■ ユーロ圏諸国は、ユーロの信認を保つために、ギリシャをはじめとする財政 リスクの大きい加盟国を切り離したい。
■ ユーロの縛りがなくなれば、ギリシャも思い切った政策をとって財政再建に臨める。
■ 現行法制において、欧州連合との協議に基づく加盟国のユーロ離脱は認められる。
上記のようにその他の加盟国にとっては「お荷物」であるギリシャを切り離すことでユーロの信用回復というプラス効果があり、ギリシャ自身は金融政策の縛りがなくなることで思いきった金融緩和、通貨の切り下げという施策がとれるというメリットがあります。なにより、ルールとしては一方的もしくは強制的でなければ離脱すること自体は可能なのです。
では、離脱を検討しない(可能性が全くないとは言えませんが)理由です。
■ 長い時間をかけて統一したものを分離するのは実務上の弊害が大きい。
■ ユーロ建てでの国内外における各種契約その他、全て見直す必要があり、某 大なコスト・労力となる。
■ ギリシャにとっては、ユーロ圏に留まっているからこそ他加盟国によって庇 護されている。
ちょっと古い話ですが、ノーベル経済学賞受賞者であるクルーグマン教授は、昨年、ギリシャのユーロ離脱の可能性は50%とコメントし、その際にはアルゼンチンと同じ道を歩むことになるだろうとの指摘もしています。
2001年デフォルトを起こしたアルゼンチンは、米ドルとのペッグ制を外すことで、通貨ペソの切り下げを断行、財政再建に取り組みました。
ただ、自国通貨ペソが流通しているところでペッグ制を外すというアルゼンチンの施策に対し、ギリシャのように自国通貨を他国と共通のユーロに統一しており、かつ金融政策すら自前のものではない状況とでは、コストも労力も比較にならないように思えます。
ギリシャの財政再建には大きなてこ入れが必要ですが、後ろ盾なしにできる状況ではありません。現時点でユーロ離脱がギリシャにもたらすものはメリット以上に困難の方が大きく、ギリシャが自発的に離脱をすることは考えにくいと言えるのではないでしょうか。
そうはいっても、ニュースになれば反応するのが市場です。
こうした話題がニュースに出たら、短期的に上手に波に乗れればチャンスですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー